抵抗内蔵型トランジスター(BRT)ベース電流、入力電圧の計算方法(考え方)

BRTは通常スイッチとして使用されます。このため、理想的にはオン時の電圧(コレクター・エミッター間電圧 VCE )はできるだけゼロに近くなることが重要になります。
ベース電流はこの点から考える必要があります。
VCEを可能な限り低くするためには、図1に示すトランジスターを飽和領域で使用します。トランジスターのhFEは通常100で考えますが、飽和領域なので10~20で考える必要があります。このため、コレクター電流の1/10~1/20のベース電流が必要です。

VCE=0.2V、IC=10mAを実現する回路に関して簡易的に考えてみます。使用するBRTはRN1402 (R1=R2=10kΩ) です。データシートに記載されているVCE(sat) – ICカーブを見ます。hFE=IC / IB=20の条件で、IC=10mAのときにVCE(sat)は0.05V~0.06Vであることがわかります。この条件で進めます。

図-2 基本回路図に示す内部ベース電流 Ib
    Ib= IC / hFE =10mA / 20 = 0.5mA
内部のベース電圧Vbeは、簡単のため一般的に使用される0.7Vとします。R2を流れる電流 IR2
    IR2 = 0.7V / 10kΩ = 0.07mA
従って、センター値になりますが、BRTとしてのベース電流 IBは以下になります。
    IB = Ib + IR2 =0.57mA
このベース電流 IBとなる入力電圧 VI
    VI = R1 * IB + Vbe = 10kΩ * 0.57mA +0.7 = 6.4V

バラツキや温特などを考慮する必要がありますが、6.4V以上の入力電圧を印加すればVCE=0.2V、IC=10mAは実現できると考えることができます。

実際には6.4V以上の電圧を印加することになると思います。その時の動作を少し述べます。

データシートでのVCE(sat)の表記(RN1401~1406)
Characteristic Symbol Test Circuit Test Condition Min Typ. Max Unit

Collector-emitter

saturation voltage

RN1401 to 1406 VCE(sat) IC = 5 mA, IB = 0.25mA
0.1 0.3 V

6.4Vより大きな電圧を印加しても問題はありません。トランジスターがより深い飽和(VCE(sat)が低くなる)になるだけです。内部トランジスターのベース・エミッター間電圧は少し上昇しますが、大きな上昇はありません。(参考のために内蔵トランジスターと同等の2SC2712のVBE(sat)-ICカーブ(hFE=10)を図-4掲載します。)BRTがよく使用される範囲(IC=5mA~30mA)でも百mV程度の変化となります。
ベース電圧はほぼ動きませんので、R1の両端の電位差が大きくなりベース電流 ibが増加します。また飽和時のコレクター電流は負荷抵抗などの外部要因によって決まる電流ですが、ほとんど変わりません。従って、ベース電流がだけが増加することにより内蔵トランジスターのhFEがより低下し、飽和が深くなり、VCE(sat)が下がることになります。
飽和が深くなることによりオン⇒オフへ移行する時間が長くなることがあります。この点も注意ください。
入力電圧VIには最大電圧があります。下記のFAQも参考にしてください。

図-1 バイポーラートランジスターの動作領域
図-1 バイポーラートランジスターの動作領域
図-2 BRT基本回路
図-2 BRT基本回路
図-3 VCE(sat) - IC
図-3 VCE(sat) - IC
図-4 2SC2712 VBE(sat) - IC
図-4 2SC2712 VBE(sat) - IC