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パワーMOSFET 技術者インタビュー

最新プロセスで業界トップクラスの性能を実現 幅広いニーズに応える東芝のパワーMOSFET

ディスクリート (単体) のパワーMOSFETは、商用交流電圧を直流電圧に変換するスイッチング方式のAC/DCコンバーター回路や、直流電圧を変換するDC/DCコンバーター回路になくてはならない存在です。
当社では、さらなる特性の改善を目指して、今も地道な開発を続けています。
その動機となっているのが 「MOSFETの損失を少しでも減らしたい」 という想いです。MOSFETで発生する導通損失やスイッチング損失を抑えて電源回路の効率を高めることで、省エネ社会あるいは持続可能社会の実現に貢献したいと考えています。
当社では、こうしたディスクリートMOSFETの開発と製造を長年にわたって手掛けてきており、現在では、耐圧600 Vを中心とした中高耐圧品 「DTMOSⅣ」 シリーズと、耐圧30 Vから250 Vの低耐圧品 「U-MOS Ⅷ-H」 シリーズを展開しています。今回は、この両シリーズの特長について開発を担当した技術者に訊いてみました。

中高耐圧品「DTMOSⅣ」シリーズ 業界の先陣を切ってシングルエピ技術を量産に採用

―「DTMOSⅣ」 シリーズの特長を教えてください。

(小野寺) 中高圧アプリケーション向けには、スーパージャンクション構造を採用した耐圧600 Vの 「DTMOSⅣ」 (ディーティーモス・フォー) シリーズを取り揃えています。シリーズ名末尾の 「Ⅳ」 のとおり、当社の第4世代となるスーパージャンクションプロセスです。 
スーパージャンクションとは、n層の中に縦型のp層を設けて、電界強度が均一となる空乏層を両者の境界面に形成し耐圧を稼ぐ方式です。通常の中高耐圧MOSFETに比べてオン抵抗が小さいのが特長です。
今回 「DTMOSⅣ」 の製品化にあたって、当社は業界の先陣を切る形で、縦型p層の形成にシングルエピ技術を本格量産に採用しました。これまで業界で主流となっていた多段エピタキシャル (マルチエピ) 技術では熱拡散によってnとpの境界に濃度変化が生じやすいのですが、シングルエピの場合は直線的にp層が形成されるため、特性に優れるとともに微細化が図りやすいメリットがあります (図1) 。 
シングルエピは一方で、エピの回数が一回で済むため製造リードタイムの短縮にもつながります。本格的な量産に至ったのは当社が初めてと考えており、今後もシングルエピで先行できるように努めていきます。

―シングルエピ技術を採用した結果、従来品と比べて性能はどう変わりましたか?

(小野寺) 性能のうち導通損失の指標となる 「RON・A」 (単位面積あたりのオン抵抗) は、当社第3世代の 「DTMOSⅢ」 に比べておよそ30%の低減を実現。また、シングルエピの効果によって高温時におけるオン抵抗の増加が、たとえばTch = 125℃にて従来よりおよそ10%ほど小さく、高温環境においても高効率が維持されます (図2) 。スイッチング損失Eossも従来世代に比べて12%以上小さくなっています。
高耐圧かつ低オン抵抗の 「DTMOSⅣ」 シリーズは、大型のIT機器や通信機器、サーバー機器の電源などの大電流アプリケーションに適するほか、セルのシリーズ接続によって数百Vの電圧を扱わなければならない太陽光発電のインバーターあるいはコンバーターなどにも最適です。当社のプレーナー型の中高耐圧MOSFETは、高い信頼性を求めるお客様を中心に多くのシェアを獲得してきました。スーパージャンクションによって大電流化を図った 『DTMOSⅣ』 がポートフォリオに加わり、アプリケーションがさらに広がることを期待しています。

(図1) 特性に優れるシングルエピ技術を本格量産としては初めて採用
(図1) 特性に優れるシングルエピ技術を本格量産としては初めて採用
(図2) シングルエピ技術の採用によって高温におけるオン抵抗の増加を抑制
(図2) シングルエピ技術の採用によって高温におけるオン抵抗の増加を抑制

低耐圧品「U-MOS Ⅶ-H」シリーズ 最新プロセスをラインアップ全体に適用

―「U-MOS Ⅷ-H」 シリーズの特長を教えてください。

(横田) モバイル機器のACアダプター、ゲーム機、IT機器、通信機器、AV機器、白物家電、小型産業機器など、さまざまな電子機器のAC/DCコンバーター回路やDC/DCコンバーター回路に適した低耐圧ディスクリートMOSFETが 「U-MOS Ⅷ-H」 (ユーモス・エイト・エイチ) シリーズです。 MOSFETとしてはトレンチ構造を採用しており、シリーズ名の 「Ⅷ」 が示すように、当社の第8世代のトレンチプロセス品にあたります。
産業市場向けに必要とされる30 Vから250 Vまですべてのレンジをカバーする第8世代プロセスを開発。業界トップの特性を備えた競争力の高い製品のラインアップを実現しました。

―30 Vから250 Vまですべてのレンジをカバーした最新世代。性能面ではどうなんですか?

(横田) 代表的なNチャネル品を例に具体的な性能を見ていくと、まず導通損失の低減に有意な性能指標である 「RON・A」 (単位面積あたりのオン抵抗)は、VDSS = 100 Vの場合で、従来世代品 (U-MOS Ⅳ) と比べておよそ1/2に削減。電源回路の軽負荷時に影響の大きいドライブ損失の低減に有意な性能指標である 「RON・Ciss」 も、従来品のおよそ40%に抑えられています。
こうした特性を持つ 「U-MOS Ⅷ-H」 を、ノートパソコンのACアダプターを想定したVOUT = 19.5 VのAC/DCコンバーター回路に適用し電力変換効率を測定したところ、他社製品と比較し、重負荷時では同等効率、軽負荷時では東芝U-MOSⅧ-Hの特性が優位となっています。(図3)

(図3) 負荷領域全域で業界トップレベルの変換効率を実現
(図3) 負荷領域全域で業界トップレベルの変換効率を実現

不断の開発努力でさらなる高性能化を目指す

当社が今回開発した 「U-MOS Ⅷ-H」 シリーズと 「DTMOSⅣ」 シリーズは、いずれも業界においてトップクラスの性能を実現した製品です。耐圧で30 Vから650 Vまでがラインアップされたことで、たとえば通信機器の電源回路の場合で、48 VDCを生成するAC/DCコンバーター、12 Vないしは5 VDCを生成するDC/DCコンバーター、および、デバイスに必要な低電圧を生成するPOL (ポイント・オブ・ロード) 電源まで、すべてを当社の最新パワーMOSFETで構成可能です (図4) 。 
これまで一部の品種には旧世代のプロセスを使ってきましたが、今回の新たな製品のリリースによって、業界ナンバーワンの特性を幅広いレンジでお客様に提供することができるようになりました。
実際には、電源回路全体としてみると、ディスクリートMOSFETの性能が寄与できる度合いは決して大きくはありません。しかし、そうした積み重ねこそが高効率な電源回路の実現には不可欠であり、不断の技術開発が重要です。当社では、省エネルギー社会の実現に少しでも貢献するため、今回開発した高性能なパワーMOSFETの提供と合わせて、新たなプロセス開発にも引き続き取り組んでいきます。

(図4) 電源回路全体に適用できる幅広いラインアップを展開
(図4) 電源回路全体に適用できる幅広いラインアップを展開

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