「技術って面白い!」 ― 記録への挑戦に向けて技術と情熱が交差する舞台

学生フォーミュラ日本大会2025

 (C) 2025 自動車技術会

学生フォーミュラ日本大会は、公益社団法人 自動車技術会主催のもと自動車技術分野での活躍を目指す大学、高専などの学生に向けて、ものづくりの本質やそのプロセスを学ぶことで創造性に満ちた技術者育成を支援するための大会です。学生が厳密に定められたレギュレーション (車両規則) に則り、自ら学びながら車両を制作したフォーミュラカーで様々な種目で競い合います。コロナ禍以降はアジア各国からも日本大会に参加するチームが増えてきています。

「ものづくりの機会を提供することによって、大学・高専等の工学教育活性化に寄与する。」という大会理念のもと、学生がものづくりの本質やチームワーク、実践的な技術力を身につける機会となり、将来の自動車産業を担う人材への成長の場として注目が集まっています。わたしたち東芝デバイス&ストレージは、この理念に賛同し本イベントのスポンサーを2022年から務めさせていただくことで未来の技術者たちの挑戦を応援しています。

昨年開催された学生フォーミュラ日本大会2024の取材レポートを東芝デバイス&ストレージのwebサイトに掲載していますが、今年も新入社員2名がAichi Sky Expoで開催された大会の取材を行いました。さらに東芝デバイス&ストレージが活動を支援させていただいている、群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) と東京大学フォーミュラファクトリー (UTFF) の2チームにご協力いただき密着取材を実施しました。2チームへの取材を通して学生たちの熱い挑戦や現場のリアルな空気を体験させていただきましたので、ほんの一部とはなりますが「新入社員の現場レポート」としてお届けします。

大会概要

会期 2025年9月8日 (月) ~13日 (土) 
会場 Aichi Sky Expo
入場料 無料
主催 公益社団法人 自動車技術会

詳細情報は公式サイトをご確認ください

参加クラス

2025年大会から混合成績を廃止し、ICV (ガソリンエンジン車) とEV (電気自動車) のクラス別に順位を決定。今大会はICVクラスに59チーム EVクラスには25チームがエントリーしました。

審査種目

静的審査:設計・コスト・プレゼンから企画力・技術力を評価
審査項目:プレゼンテーション、コスト、デザイン (設計) 

動的審査:加速・スキッドパッド・耐久などの走行性能を評価
審査項目:アクセラレーション、スキッドパッド、オートクロス、エンデュランス、効率

車検:動的審査の前に安全性・規則遵守を技術的にチェック

車検
審査項目
機械車検 脱出 フラッグ チルトテーブル試験 ブレーキ試験 騒音試験 レインテスト 電気車検
ICVクラス    
EVクラス  

審査種目の詳しい情報は公式サイトをご確認ください
審査概要|学生フォーミュラ


群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) はガソリンエンジンを使用するICVクラス、東京大学フォーミュラファクトリー (UTFF) は電気自動車のEVクラスにエントリーしています。

ものづくりの面白さに出会う

——新入社員の現場レポート——

群馬大学 (GUFT) 編:チーム一丸で挑んだ学生フォーミュラ

画像提供:群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) 、東芝デバイス&ストレージ株式会社

東芝デバイス&ストレージ2025年度入社の新入社員Tです。

東芝デバイス&ストレージが活動支援している群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) に密着し、日々の活動の様子や大会本番の取り組みについて取材してきました!
GUFTの皆さんは、年に一度開催される学生フォーミュラ大会に向けて、成績向上を目指し、夏の暑さにも負けない熱意で日々活動を続けています。

学生自らが設計・製作・運営までを担うこのプロジェクトは、技術力だけでなく、チームワークや課題解決力を育む貴重な学びの場となっています。
GUFTの皆さんが目標に向かって真剣に取り組む姿勢と、仲間とともに挑戦を楽しむ姿がとても印象的でした。

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) が作成したフォーミュラカーの写真です。

完走を目指した挑戦

昨年度、GUFTは惜しくも車検を通過することができず、走行種目への参加を果たせませんでした。その悔しさを糧に、今年度は「車検の通過」と「走行種目の完走」を目標に掲げ、メンバー全員が一丸となって取り組んできました。

チームの活動は、主に2つの班に分かれています。

  • エンジンや駆動系を担当するパワートレイン班
  • 車体や足回りを担当するシャシー班

それぞれが専門分野に特化して開発を進め、毎週の全体ミーティングでは進捗の共有や課題の洗い出し、改善策の検討を重ねることで、一歩一歩着実に前進してきました。
GUFTはエンジンを搭載した ICV (Internal Combustion Vehicle) 車で大会に参加しており、今年度は昨年度の車両をベースに改良を加える形で開発を進めました。しかし、開発の遅れにより、大会前に試走会への十分な参加や車検に向けた模擬車検会の実施は叶いませんでした。それでも、試走会ではブレーキ試験やエンジン燃調作業を行うなど、これまでのGUFTでは到達できなかった段階に進むことができました。
さらに、大会前には車検に向けたエビデンス資料を整備し、車検合格に向けた取り組みを強化することができました。

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) が大会に向けて取り組んでいる写真です。 ​
これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) が大会に向けて取り組んでいる写真です。 ​

想いを形にしたプレゼンテーション

Aichi Sky Expoで開催された大会の2日目・3日目には静的審査が行われました。※静的審査の審査内容は審査項目をご確認ください。
デザイン審査とコスト審査では残念ながら思うような成果を得られませんでしたが、プレゼンテーション審査ではICVクラス58チーム中4位という好成績を収めました。この審査では、廃線の再利用という社会課題に対し、フォーミュラカーの活用による解決策を提案。車両の特徴をビジネスにどう活かすかという視点を丁寧に掘り下げ、説得力のある構成で発表できたことが高く評価されました。
日頃から社会のニーズやトレンドを意識した取り組みを続けてきたことが、素晴らしい結果につながりました。

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) がプレゼンテーション審査を受けている写真です。

手応えを実感した車検

静的審査と並行して2日目から車検の審査が行われました。※車検の審査内容は審査項目をご確認ください。
車検項目をすべてクリアすることで走行競技 (動的審査) への参加が可能となります。
車両の安全性の確認を行う機械車検は、数十項目に細分化されており、いずれか1項目でも不備があれば不合格となります。
GUFTは初回の機械車検で約10項目の課題を指摘されましたが、修正を加えて再挑戦し、無事合格!その後、脱出テストとフラッグ試験もクリアしました。しかしチルト試験で車体を傾けた際に燃料漏れの疑いが発生。燃料漏れは機械車検における重大な安全リスクのため、機械車検を最初から受けなおす必要に迫られました。
大会期間中に燃料漏れの原因究明と修復に向けて現場で試行錯誤を重ねましたが、燃料タンクの溶接部の劣化が原因であることが判明。最終的に車検通過は果たせず、動的審査への参加は叶いませんでした。

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) が車検審査を受けている写真です。
これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) が車検審査を受けている写真です。

確かな一歩 GUFTの前進

結果としては昨年度と同じく「車検未通過」となりましたが、今年は燃料漏れ以外の部分に問題はなく、確かな進歩を感じられる大会となりました。騒音試験やブレーキ試験は本大会では実施できなかったものの、試走会ではいずれも大会本番での車検合格レベルを満たしており、翌年度につながる成果になったのではないでしょうか。
昨年度は失敗から学び、今年は成功体験も得られたGUFT。
「今回の経験は、来年の挑戦に向けた大きな糧となった」とお話されていました。

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) がフォーミュラカーの修正をしているの写真です。

学生フォーミュラの取材を通して

取材を通して、GUFTの皆さんの「車検に合格し動的審査項目に参加する」という熱い想いが伝わってきました。大会の最後まで諦めず挑戦し続ける姿には胸を打たれ、来年は自信を持って走行する姿をぜひ見たいと感じました。
さらに、他大学のメンバーと意見を交換しながら作業を進める光景も印象的でした。困っているチームに手を差し伸べる姿から、学生フォーミュラ大会全体が、チームや大学の垣根を越えて人と人がつながる場であることを強く実感しました。
GUFTの皆さんのさらなる成長と、来年の大会での活躍を心から応援しています!

これは群馬大学学生フォーミュラチーム (GUFT) の集合写真です。

東京大学 (UTFF) 編:進化を刻み継承する学生たちの挑戦

画像提供:東京大学フォーミュラファクトリー (UTFF) 、東芝デバイス&ストレージ株式会社

東芝デバイス&ストレージ2025年度入社の新入社員Sです。

今回は、東芝デバイス&ストレージが活動支援する東京大学の学生フォーミュラチームUTFF (東京大学フォーミュラファクトリー) に密着取材しました!
UTFFはメンバーの高い専門性と情熱で勝負するチームです。
2023年大会からはEVクラスに参加し、スローガンは「MORE POWER. BETTER CONTROL」
バッテリー強化、制御プログラムの最適化、マシンの軽量化など、無駄のない車両運動性を目指して年々改良を重ねています。
今年はレギュレーション上限の80kWをフル活用するためにバッテリーセルを高出力型に変更。タイヤサイズの見直し、冷却性能の向上など、細部まで徹底的に改良を行いました。
さらに、リアサスペンションをダブルウィッシュボーン化し、会場路面への最適化を行うなどの改善を通して、昨年のEVクラス3位から今年はEVクラス全25チーム中2位以上を目指しています。

設計思想とコスト管理の攻防

静的審査の中でも、デザイン審査とコスト審査は“ものづくり”の本質が問われる重要なパートです。
デザイン審査では、マシンの性能や設計意図を説明。
「なぜこのバッテリーを選んだのか」「運転しやすい椅子かどうか」など、細かな質問にも丁寧に対応し順位は6位。担当した学生の方は「サスペンションの大幅変更の部分を指摘されてしまったので、来年以降に向けて改善したい」と前向きにコメントしていました。
コスト審査では、提出済みの見積書をもとに、部品選定や製造工程、作業時間などを細かくチェック。テープ一本の記載漏れでも減点対象になる厳しい審査です。
バッテリーが使えなくなった場合の対応など、リアルケースにも冷静に対応し、順位は9位。性能重視の設計方針を貫いた姿勢が印象的でした。

これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) がコスト審査を受けている写真です。
これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) がコスト審査を受けている写真です。

1年生が挑んだビジネス提案

プレゼン審査は、「技術を使って何を実現するのか?」という提案型の審査項目であり、今年はベンチャー企業として新提案を行う設定の下、「インド市場への展開」をテーマに事業提案を行いました。
「雇用などのリソースをどう確保するか?」という質問にも、「準備期間を設けて段階的に整えていく」と冷静に回答しました。
UTFFでは立候補制でプレゼン担当学生を決めており、経験よりも成長の場として挑戦する文化があります。今回のプレゼンを担当したのは1年生。何度も練習を重ね、本番では堂々とした発表を披露しました。
先輩たちのサポートもあり、見事1位を獲得。チームの多様性と育成力を強く感じる場面でした。

これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) がプレゼンテーション審査を受けている写真です。

徹底準備で掴んだベスト車検賞

学生フォーミュラにおいて、車検は走行前の安全性・性能チェックという重要なプロセス。
UTFFは、機械車検・電気車検・チルトテーブル試験・レインテストなど、すべての項目を丁寧にクリア。二日目までにほぼ完了するスムーズな進行を行い、最速での車検通過を達成しました。
特に“鬼門”とされる機械車検では、約100ページにも及ぶ資料を準備。聞かれる内容を事前に想定して対応した結果、「ベスト車検賞」を受賞しました。
EV車はバッテリーのメンテナンス等、ICV車に比べて人手がかかる中、緻密な準備で乗り越えた姿勢に、感銘を受けました。

これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) が車検を受けている写真です。

持久戦を制した準備と結束

学生フォーミュラの中でも最も過酷な競技「エンデュランス」。直線・ターン・スラロームなどが入り混じった約1㎞のコースを20周走り切る必要があり、走行後の電力消費量も審査対象となるため、タイムだけでなく完走する持久力やペース配分も求められます。
UTFFは、木曜日までの種目の結果でエンデュランスは土曜日の出走となり、金曜日は準備に充てる時間を確保することができました。チームはこの機会を最大限に活かし、最後まで細かい調整を続けていました。
その結果、エンデュランスではEVクラス2位を獲得。
完走後、ドライバーを拍手で迎える仲間たちの姿には、チームの一体感と達成感があふれていました。

これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) がエンデュランス試験を受けている写真です。

進化と継承、次世代へのバトン

これは東京大学の学生フォーミュラチーム (UTFF) の集合写真です。

大会後、UTFFのコーディネーターの方とチームリーダーの方にお話を伺いました。
コーディネーターは「1年間かけて準備してきたものが、様々な形で表れた」と振り返り、特に「車検を早期に突破できたことが後半の動的審査につながった。」と振り返りました。
リーダーも「昨年の反省を活かし、マシンのパワーや制御面で進化できた」と手応えを感じている様子。車体の大幅な変更についても、設計通りの性能が発揮されたことに満足し、「東大らしさが出た」と笑顔を見せました。
今後について、コーディネーターは「状況変化への対応力が鍛えられた」と強調した一方、リーダーは「成功をどう次に引き継ぐかが一番難しい」と冷静に分析。
大会を通じて得た経験は、次世代のUTFFにしっかりと受け継がれていくことでしょう。

今回の密着取材を通じて、私が一番強く感じたのは「挑戦する姿勢の力」でした。
全体順位は4位となりましたが、エンデュランス2位、プレゼン審査1位、ベスト車検賞など、各所で確かな成果を上げました。
設計や制御に妥協せず細部までこだわり抜く姿勢、出走順が読めない中でも冷静に準備を進める計画力、そして走行後にドライバーを拍手で迎える仲間たちの姿には、技術だけでは語れないチームの絆がありました。
UTFFの挑戦は、これからも多くの人に刺激と感動を与えてくれることでしょう。

技術と情熱で、未来をカタチに 
―次世代のものづくりを支える方々へ―

挑戦する姿が、技術の未来を創り出す。挑戦を続ける限り、無限の可能性があります!新入社員TとSより

学生フォーミュラに挑む皆さんの姿から、情熱・探求心・仲間との協力の大切さが伝わってきました。「技術って面白い!」と改めて感じると共に、公益社団法人自動車技術会関係者の皆様が大会の円滑な運営や学生への支援など様々な活動を行っていることにも感銘を受けました。東芝デバイス&ストレージは、引き続き学生フォーミュラ日本大会に参加する皆様の支援活動を続けていきたいと思います。

東芝デバイス&ストレージは、社会のニーズに応えながら進化を続ける未来のモビリティの可能性を広げていくために、効率的な電力制御ソリューションに欠かせない各種パワー半導体やモーター駆動ソリューションを始めとする幅広い領域での車載用デバイスの開発、供給、技術サポートを通して、安全性、環境性能など自動車技術のさらなる発展に貢献していきます。
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東芝グループ経営理念「人と、地球の、明日のために。」をもとにより良い社会の実現を目指し「世界を変える原動力」となるよう、これからも技術の力で課題を解決していくために、学生フォーミュラ日本大会2025に参加している学生の皆さんに負けない情熱を持って取り組んでいきます。