600mの長距離通信とモジュールの小型化を両立したBluetooth® low energy SoCを開発

2018年 9月 7日

株式会社 東芝
東芝デバイス&ストレージ株式会社

株式会社東芝と東芝デバイス&ストレージ株式会社は、世界最高注1となる113dBのリンクバジェット注2と通信モジュールの小型化を両立したBluetooth® low energy Ver.5.0規格準拠のSoC(System on a Chip) 注3を開発しました。本技術により、従来製品の約4.6倍注4である600mの長距離通信を実現し、かつ同水準の通信距離を持つSoCに比べてモジュールの部品数を約半分に削減可能です。9月6日(現地時間)にドイツ・ドレスデンで開催された半導体国際会議「ESSCIRC2018」にて受信側技術の詳細を発表しました。なお、本技術を採用したBluetooth® low energy Ver.5.0規格の製品の量産出荷を今月から開始します。

近年、ドローンや忘れ物タグなど、Bluetooth®を利用した製品にはさらなる長距離化が求められています。これらのアプリケーションには通信の長距離化のほか、使いやすさと普及促進の観点から通信用SoCを含むモジュールサイズの小型化が求められています。

Bluetooth® low energyは、低消費電力を特長とした無線通信の規格であり、現在多くの機器に採用されています。同規格においてさらなる長距離化を図った新規格Bluetooth® low energy Ver.5.0にSoCを対応させるには、送信電力の増加が不可欠であり、そのためには、新たな電源回路・部品を追加し、送信機の電源電圧を上げるか、送信機の負荷インピーダンス注5を下げる必要があります。電源電圧を上げる場合はモジュールが大型になる課題が、負荷インピーダンスを下げる場合は、受信時に受信電力が送信機側に流れてしまい通信距離を伸ばせない課題があり、通信モジュールの小型化と長距離通信の両立は困難でした。

そこで、両社は、Bluetooth® low energy Ver.5.0向けに新たな送受信インピーダンス整合技術を開発しました。

送信機の負荷インピーダンスを下げた際の受信性能劣化を避けるため、受信時に送信機の負荷をスイッチで切り離し、受信電力が送信器側に流れないようにすると、受信信号に雑音が混入し、受信感度が低下してしまいます。従来、この雑音に対して送信機側のインピーダンスを小さくし送信機側に流すことで受信感度を向上させていましたが、今回は受信機側のトランスを用いたインピーダンス整合回路に雑音除去フィルタを搭載しました。

通常、インダクタ注6を用いたインピーダンス整合回路に雑音除去フィルタ機能を追加すると、コイルの巻き線が細く、巻き数が多くなり、損失が大きく受信感度が劣化しますが、今回トランスを用いたことで、コイルの巻き線が太く、巻き数が少ないものになり、損失を小さく抑えることで受信感度向上が可能になりました。

また、インダクタのチップ面積の大半は配線禁止領域であるため、トランスを用いたことによる送受信機全体の面積増加は1%程度です。本技術により、通信モジュールサイズの小型化と600mの長距離通信の両立に成功しました。

今後も、本技術をはじめとした無線通信関連の技術開発を促進し、IoT機器の利便性向上に貢献していきます。

注1 Bluetooth® low energy Ver.5.0規格に準拠した製品において、2018年1月時点、当社調べ。

注2 リンクバジェット:送信電力(単位:dBm)と受信感度(単位:dBm)の差を指し、大きいほど長距離通信が可能であることを示す指標。

注3 本製品には、東芝デバイス&ストレージが開発した、電力増幅器における不要波の抑制能力と電力効率を向上させる技術も搭載されています。

注4 当社製の従来製品「TC35678」との比較

注5 インピーダンス:交流回路での電圧と電流の比のこと。単位は直流回路の抵抗と同じΩ(オーム)が使われ、数値が大きいほど電流が流れにくく、小さいほど流れやすいことを示す。

注6 コイルのこと。

*Bluetooth®ワードマークは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する商標です。

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