トランジスターをダイオードとして使用しても問題ないでしょうか?

バイポーラートランジスターはダイオードを2個接続した構造となっています (図-1) 。このため、ダイオードとして機能させることは可能です。但し、ダイオードでの使用を意図して設計されていないため、電流定格などで問題が生じることがあります。例えば、トランジスターでは一般的な使用法ではコレクター電流に対しベース電流は1/10以下で使用されると想定しています。このため、ベース周辺の設計ではこれに合わせた設計(内部配線やボンディングワイヤなど)がされており、電流定格もこれに合わせています(表-1)。また、ベースからエミッター、ベースからコレクターへの2つのダイオードは回路図的には同じダイオードに見えますが、トランジスターの構成としてエミッターとコレクターの濃度は大きく異なっており(例えばnpnトランジスターではnc << ne)ダイオードの特性も大きく異なります。

トランジスターの温度補償回路などで、同じトランジスターをダイオードとして使用する例がありますが、データシートの定格を外れない範囲でご使用ください。また一般的な用途に対しては専用ダイオードをご使用ください。

図-1 npnトランジスター
図-1 npnトランジスター
表-1 バイポーラートランジスターの絶対最大定格(2SC2712)
表-1 バイポーラートランジスターの絶対最大定格(2SC2712)
図-2 エミッター接地増幅回路での温度補償回路例
図-2 エミッター接地増幅回路での温度補償回路例