製造現場の自動化 (FA:ファクトリー・オートメーション) は今日の高度な”ものづくり”において、なくてはならないものとなりつつあります。そのFA実現の中枢を担っているのがPLC (プログラマブル・ロジック・コントローラー)であり、その充実した入出力機能を支えるデジタル入力モジュールはIEC61131-2[注1]の適用が始まっています。産業制御機器においては多種多様な機器間接続をするにあたり標準化(規格化)が進められており、日本においてはJIS B 3502にて産業環境を意識したPLCに対する規格化がなされています。今回、この規格に準拠したデジタル入力モジュール設計に最適な高速通信用フォトカプラー TLP2363をご紹介します。
[注1] IEC 61131-2:プログラマブルコントローラー 装置への要求事項及び試験
PLCで使用するデジタル入力モジュールに対してIEC 61131-2 では、入力回路の電圧・電流動作領域を3種類 (タイプ1, 2, 3) 規定しています。TLP2363では、後述の回路定数を選定することでタイプ1の電圧・電流動作領域に対応できます。図1のとおり、デジタル入力に対する要求事項の特徴として、モジュールがOFFすべき領域も定められています。
デジタル入力モジュールの構成を図2で示します。図1の動作領域に従うために、R1とR2を設定する必要があります。従来の高速通信用フォトカプラーでは、出力のハイ/ローを制御するスレッショルド入力電流に対する保証は最大値のみであり、図1の動作領域に従うモジュールの設計が困難でした。
TLP2363はスレッショルド入力電流を最大値のみならず、最小値も保証することで、図1の動作領域に従う入力モジュールの設計の簡易化に貢献します。
図2の周辺部品は下記定数を使用することで、TLP2363は動作保証する-40℃から105℃の周囲温度条件下で、図1の動作領域に従うことができます。[注2]
[注2] 規格準拠を保証するものではありません。設計方針の参考としてお使いください。
IEC 61131-2 では、上記の入力回路の動作領域に関する要求事項の他に、外部供給電源の変動に対するPLCシステムの挙動について、実施すべき試験の規定があります。その中の外部供給電源の緩やかな停止・始動試験では、電源を60 sかけて立ち上げたり、立ち下げたりする際に、予め規定された挙動を示すことを確認すべきとされています。
TLP2363は電源電圧を60秒かけて立ち上げたり、立ち下げたりした場合にでも、出力はチャタリングを起こさず安定している(図3)ので、図2のシュミットトリガーが不要(図4)であり、部品点装数の削減に貢献します。
図3 左側:VCCを0Vから3.3Vまで60 sかけて立ち上げる際のVO挙動
右側:VCCを3.3Vから0Vまで60 sかけて立ち下げる際のVO挙動
IF:フォトカプラーの一次側 (LED) に流れる電流
VO:フォトカプラーの出力電圧
さらに、外部入力が不安定な場合でも、TLP2363は安定した出力を維持できるよう、入力信号の緩やかな立ち上がり、立ち下がりに対しても高い耐量を施しています。(図5)
図5 左側:IFを0mAから2.4mAまで60 sかけて立ち上げる際のVO挙動
右側:IFを2.4mAから0mAまで60 sかけて立ち下げる際のVO挙動
IF:フォトカプラーの一次側 (LED) に流れる電流
VO:フォトカプラーの出力電圧
TLP2363はオープンコレクター出力タイプなので、VCCに最小動作電圧以上の電圧を与えている場合、出力論理は下記のとおりです。
LED |
VO |
---|---|
ON |
L |
OFF |
H |
以上、15 Mbps (標準) のデータ伝送を実現するTLP2363は、高速な入出力が要求されるPLC向けデジタル入力モジュール設計に最適です。
品番 |
TLP2363 |
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データシート |
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パッケージ (幅×長さ×高さ mm) |
5pin SO6 |
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絶対最大定格 |
動作温度 |
-40 ~ 105 |
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出力電流 |
25 |
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電気的特性 |
供給電流 |
4 |
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スレッショルド入力電流(H/L) |
@VCC=3.3V, RL=1kΩ |
0.3 ~ 2.4 |
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スイッチング特性 | 伝搬遅延時間 |
80 |
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コモンモード過渡耐性 |
@Ta=25℃ | ±20 |
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絶縁特性 | 絶縁耐圧 |
@Ta=25℃ | 3750 |