現在急速にスマート化が進んでいる家電製品に内蔵される各種センサー(人感センサー、距離センサー、電流センサー、など)の役割はますます大きくなっています。これらで使われるセンサー素子にはさまざまな種類がありますが、センサー素子から出力される検出信号はいずれも非常に微弱なので、一般的にはオペアンプで増幅されて扱われます。このときに増幅に使われるオペアンプには、自身のノイズによって微弱なセンサー出力信号をマスクしてしまわないように低いノイズレベルが求められます。
当社のオペアンプTC75S67TUは、従来品よりも大幅にノイズを改善した低ノイズ製品です。また、入力バイアス電流が小さいので、ノイズ源になるオフセット補正抵抗も必要ありません。
このような特長を持つTC75S67TUと高性能なセンサー素子を組み合わせることにより、より微弱な信号を検出可能な高感度かつ、高精度なセンサーを実現することができます。
ここでは、TC75S67TUのノイズ特性とセンサーへの応用例を紹介します。
ノイズの成分は、低周波領域に分布する1/fノイズと広い領域に分布するホワイトノイズに分けられますが、TC75S67TUはいずれも従来品に比べて大きく改善しています。
入力換算雑音電圧として、f=1 kHzで6 nV/√Hz (標準、GV=40dB) という低ノイズレベルを達成して当社従来品に比べて82 %改善しました。また、低周波の1/fノイズ領域では、f=10 Hzで16 nV/√Hz (標準、GV=40dB) を達成し、86 %改善しています。この結果、当社従来品と比較して広い周波数帯域でよりフラットなノイズ特性となっています。
入力換算雑音電圧はオペアンプの出力雑音をゲインで割って入力信号レベルとして表したものなので、この値が小さいほど微小な入力信号を扱うことができます。これは、よりレベルが小さいセンサー素子出力を扱えるということなので、感度や精度などセンシング性能の改善につながります。
このようなTC75S67TUのノイズ特性はさまざまなセンサーのセンシング性能を改善でき、特に信号周波数が低い脈拍センサーや人感センサーなどの性能アップに有効です。
当社ではTC75S67TUの各種センサーへの応用回路をリファレンスデザインとして公開しています。いずれもセンサーの微弱な出力信号の増幅と周波数成分のフィルタリングに用いています。
応用回路と基板パターン図を準備しておりますので、それぞれのリンク先からご利用ください。
脈拍センサー
血流に光を照射してその反射波をフォトセンサーで検出します。センサー部と増幅部の2枚の基板で構成されています。
脈拍センサーのリファレンスデザインはこちらをご参照ください。
人感センサー
焦電型赤外線センサー素子で人の動きによって発生する温度変化を赤外線で検知します。
人感センサーのリファレンスデザインはこちらをご参照ください。
電流センサー
100 mΩのシャント抵抗で電圧として電流を検知します。この信号は非常に小さいので、TC75S67TUで増幅し、MCUで電流値を読み取ります。
電流センサーのリファレンスデザインはこちらをご参照ください。
距離センサー
送受信一体型の超音波センサーを用いて、超音波を送信してから対象物で反射して帰ってくるまでの時間を測定して距離を算出します。
距離センサーのリファレンスデザインはこちらをご参照ください。
低雑音タイプ・超低消費電流タイプ・入出力フルレンジタイプ(入出力Rail to Rail)など多彩な製品をラインアップしております。
品番 |
TC75S67TU |
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データシート |
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パッケージ名称 (幅×長さ×高さ mm) |
SOT-353F (UFV) |
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動作範囲 |
電源電圧 VDD-VSS (V) |
2.2~5.5 |
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電気的特性 |
電源電流 IDD (μA) |
typ. | @VDD=2.5V | 430 |
max | @VDD=2.5V | 700 | ||
入力オフセット電圧 VIO (mV) | max | @VDD=2.5V | 3 |
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ソース電流 Isource (mA) | typ. | @VDD=2.5V | 2.5 | |
シンク電流 Isink (mA) |
typ. | @VDD=2.5V | 3.5 |
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typ. | @VDD=2.5V, f=10Hz | 16 | ||
入力換算雑音電圧 VNI (nV/√Hz) | typ. | @VDD=2.5V, f=1kHz | 6 | |
しゃ断周波数 fT (MHz) | typ. | @VDD=2.5V | 3.5 |