静電気放電(ESD : Electrostatic Discharge)とは何ですか?

ESDとは異極性の電荷が帯電した物質が近接・接触したときに生じる電荷の放電を指します。

図-1 帯電列
図-1 帯電列

全ての物質は原子から構成されています。この原子はプラスの電荷を持つ原子核と、マイナスの電荷を持つ電子からなり、電気的に中性になっています。異なる物質同士の接触など何らかの要因によって電子が奪われるとプラスの電荷を持つプラスイオンとなり、電子が加わるとマイナスの電荷を持つマイナスイオンとなります。これらはランダムに発生するわけではなく、物質によってプラスイオンやマイナスイオンになりやすい傾向があります。この傾向を経験的に表したものが図-1に示す帯電列です。これら正イオンと負イオンによる帯電が静電気の原因です。

異なる物質を接触させると、一方の物質から他方へ電子が移動します。ただし、この接触した状態ではプラスイオンとマイナスイオンは釣り合った状態で存在しているので、静電気を見ることはできません。
この正電荷を帯びた物質と負電荷を帯びた物質を分離することで静電気として認識されるようになります。例えば、ウールのセーターの上にダウンジャケット(ポリエステルなど)を重ね着し脱ぐなどの動作をしたとき、パチパチと音がすることがあります。
ダウンジャケットを着ているときに、摩擦でダウンジャケットの電子がセーターに移動するためセーターは負電荷を帯びます。
一方、ダウンジャケットは正電荷を帯びます。その後、脱ぐときに帯電した電子の一部がセーターからダウンジャケットに放電(静電気放電)したことによりこの音は生じています。
図-1帯電列のマゼンダ(ピンク)の矢印線に示すポリ塩化ビニルと人毛の関係のように離れているほど帯電する静電気の電荷量は大きく(ESDのエネルギーは大きく)なります。
木綿のシャツを脱いでも静電気が生じることはほとんどありません。

静電気は言わばコンデンサーに電荷が蓄電されるのと同じです。従って、電荷を溜めないことが重要です。静電気を生じさせない対策としては以下があります。

  1. 金属の場合はアース(接地: Ground)をしっかりとる。
  2. 湿度を高くして物質表面のインピーダンスを下げる。
  3. イオナイザーなどを用いて、帯電される電荷と逆の極性のイオンを空気中に充満させ中和させる。

電子機器の製造現場などでは、これらの対策を取り電子機器に静電気放電が加わらないようにしています。
ただし、これら対策を行っても、静電気を完全に防ぐことはできません。ICなどは静電気放電によって性能劣化・破壊などが生じないように入出力端子にESD保護回路を内蔵することが一般的です。
これらIC内蔵の保護回路は、静電気対策が行われた場所で発生する比較的小さな静電気放電(デバイスレベルの静電気放電)に対しては有効ですが、USB端子などを経由して加えられる静電気放電(システムレベルの静電気放電)に対しては十分ではありません。
日常生活では常にこのシステムレベルESDの危機にさらされます。
この対策には外付けのESD保護ダイオードが必要となります。詳しくは下記FAQをご参照ください。

FAQ:
TVSダイオードとは何ですか?
ESD(Electrostatic Discharge)試験とはどのようなものですか? 

関連リンク

TVSダイオード (ESD保護用ダイオード) の製品ラインアップについては、以下のページ、ドキュメントをご参照ください。