オペアンプなどの差動アンプを使うのはなぜですか?(同相信号除去比 CMRR)

差動アンプを使う大きな理由は、ノイズの除去に有利なためです。

図-1 オペアンプの回路記号
図-1 オペアンプの回路記号

ノイズには一般的なノイズ(ディファレンシャルノイズ)と同相ノイズ(コモンモードノイズ)があります。差動アンプは2つの入力の差分を増幅するため、差動入力端子(非反転入力VIN(+)と反転入力VIN(-))に同じノイズが印加されるコモンモードノイズは簡単に減衰させることができます。
コモンモードノイズの発生原因は大きく2つが考えられます。
①配線やケーブルなどに電磁誘導などでノイズが発生し、信号源のグランドと回路のグランド間に異なる電位(ノイズ)が生じる
②回路のグランドに別回路の電流が流れることにより電位(ノイズ)が発生する。

VOUT = AV[{VIN(+) + Vnoise} - {VIN(-) + Vnoise}]
    = AV{VIN(+) - VIN(-)}

上記①②のいずれも回路の基準点であるグランドがノイズで揺らいでおり、通常のフィルターなどでこのノイズを除去することは困難です。この同相ノイズを除去する手段の一つとして差動アンプが使われます。オペアンプはこの差動アンプを主要回路として構成されており、図-1に示す記号で表されます。入力はVIN(+)とVIN(-)の2つで、この入力間の電位差にアンプの利得AVをかけたものが出力されます。
VOUT = AV{VIN(+) - VIN(-)}
このように、オペアンプ入力段に重畳されているコモンモードノイズは除去されます。ただし、オペアンプのGNDや電源にノイズが重畳されていると、このノイズが出力に重畳されます。

図-2 入力にコモンモードノイズが重畳した増幅器
図-2 入力にコモンモードノイズが重畳した増幅器

ここで図-2(b)に示すように差動アンプの入力端子に同相ノイズVnoiseが重畳されているとすると
VIN(+)‘ = VIN(+) + Vnoise
VIN(-)‘ = VIN(-) + Vnoise
出力は下記に示すように同相ノイズが除去されることが分かります。
VOUT = AV x [ { VIN(+) + Vnoise } - { VIN(-) + Vnoise } ] = AV x { VIN(+) - VIN(-) }

図-3 CMRR測定回路
図-3 CMRR測定回路

オペアンプでは電気的特性の一つとして同相入力信号除去比(CMRR)を定義しています。(表-1 データシート記載例)
CMRRは差動ゲインに対する同相ゲインの比率です。
理論的には差動アンプでは同相信号は全く増幅されないことになっていますが、実際は内部の素子バラツキなどの影響で出力端に微小な影響が生じます。このため同相の信号やノイズを除去する尺度としてCMRRを規格化しています。
同相信号が出力される要因は入力オフセット電圧による入力電圧の微小なずれです。(FAQ:オペアンプの入力オフセット電圧とは? を参照ください)

オペアンプの入力オフセット電圧とは?

オフセット電圧はデータシート上で入力電圧=VDD/2で規定されています。しかしながらこの電圧は固定値ではなく、入力電圧の大きさに対し変動があります。
このことから図-3に示す回路で、以下の式で定義しています。
CMRR = 20 x log ( | ( VIN1 – VIN2) / ( VOUT1 – VOUT2 ) |  x ( RF + RS ) / RS )
               VIN = 0.0 Vの時の VIN = VIN1 また VOUT = VOUT1  
               VIN = 2.5 Vの時の VIN = VIN2 また VOUT = VOUT2 とします。

表-1 データシート記載例(TC75S55FU)
表-1 データシート記載例(TC75S55FU)

関連リンク

以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。