当社は、発光側(1次側)の入力順電流および受光側(2次側)の電源電圧において、立ち上がり時間や立ち下がり時間が遅い(60 s以下のスロー入力)場合でも、正常に動作できる高速通信用フォトカプラー4品種 (TLP2362B、TLP2368B、TLP2762B、TLP2768B)を製品化し量産を開始します。
フォトカプラーは電気的な絶縁を重要な機能とするデバイスで、発光素子と受光素子を光透過性の絶縁物を介してパッケージ化したものです。なかでも高速通信用のフォトカプラーは、生産工程の自動化や生産現場における人件費・生産効率を改善・最適化するためのファクトリーオートメーション(FA)に向けたアプリケーションに好適です。特にFAの中枢を担い、機器や設備などを動かすための制御としてプログラマブルロジックコントローラー(Programmable Logic Controller:PLC)があります。
PLCは、「シーケンス制御」を基に、各種の機械が実行するべき動作を事前に順序付けて記憶させることにより、効率的な機械間の動作を制御する装置です。エレベーターや信号機、自動販売機などの身近な設備、さらには工場の自動化設備、発電所・変電所などまで幅広い分野で使用されています。特に、加工・組立機械の制御に使用した場合には生産効率は格段に向上し、製造現場のFA化に大きく寄与しています。筐体内/制御装置内にかかわらず、PLCは多種類の機械/装置が配置された中に設置される場合がほとんどです。このため、設置スペース削減のためのコンパクト化や発熱の抑制、さらには、周辺の機械/装置の動作により電磁ノイズやサージなどが発生するような環境下においても確実で安定した動作が求められます。
PLCはFA実現の中枢を担っており、その入出力機能を支えるデジタル入出力モジュールではモジュール回路内の信号通信において外部信号ラインは本体と絶縁が必要です。光結合方式のフォトカプラーを用いることで簡単かつ確実に絶縁することができ、高速通信が可能なIC出力フォトカプラーを推奨します。また、国際規格であるIEC61131-2[注1]の適用が始まっています。IEC 61131-2では、外部供給電源の変動に対するPLCシステムの挙動について、実施すべき試験の規定があります。外部供給電源の緩やかな停止・始動試験では、電源を60 sかけて立ち上げたり立ち下げたりするスロー入力の際に予め規定された挙動を示すことを確認すべきとされています。新製品はこの規格に準拠しており、チャタリングを抑えるための部品(シュミットトリガー回路など)を追加する必要がなく、製品設計の簡易化や外付け回路削減に貢献します。
当社は高速通信用フォトカプラーの周辺部品として使用されるTVSダイオードやツェナーダイオードも揃えておりますので併せてご検討ください。
[注1] IEC 61131-2:工業プロセス測定及び制御-プログラマブルコントローラ-第2部:機器要求事項及び試験
発光側の入力順電流および受光側の電源電圧で、立ち上がり時間や立ち下がり時間が遅い場合に、出力で信号にノイズが発生してしまう現象であるチャタリングが問題となります。
新製品はIEC 61131-2 (Type1) に準拠しています。入力順電流と電源回路のしきい値にヒステリシスを設けており、発光側の入力順電流および受光側の電源電圧で、立ち上がり時間や立ち下がり時間が遅い場合でも、出力はチャタリングを起こすことなく、確実に「ロー」と「ハイ」を維持できます。これにより、チャタリングを抑えるための部品(シュミットトリガー回路など)を追加する必要がなく、設計の簡易化や外付け回路削減に貢献します。
図2は、TLP2362Bの入力順電流 (IF) を緩やかに0 mAから7.5 mAまで立ち上げた際の出力電圧 (VO) の挙動を示しています。IFを緩やかに立ち上げた場合でも、TLP2362Bはチャタリングを起こさず安定したVOを維持しています。
図3は、TLP2362Bの電源電圧 (VCC) を緩やかに0 Vから2.7 Vまで立ち上げた際の出力電圧 (VO) の挙動を示しています。VCCを緩やかに立ち上げた場合でも、TLP2362Bは安定したVOを維持しています。このため、新製品は、シュミットトリガー回路などのチャタリングを抑えるための部品を使用する必要がなく、設計の簡易化や外付け回路削減に貢献します。
(測定条件 IF:(立ち上げ)0~7.5 mA、(立ち下げ)7.5~0 mA、VCC:2.7 V、Ta:25 ℃)
(測定条件 IF:7.5 mA、VCC:(立ち上げ)0~2.7 V、(立ち下げ)2.7~0 V、Ta:25 ℃)
通信用として使用されているフォトカプラーの伝送レートは数kbps程度のものからありますが、PLCなどの産業用電子機器では、各装置間のデータ伝送時の待機時間は短縮化が進み、より高速なフォトカプラーが求められています。図4に示す通り、新製品はフォトダイオードの後段に高利得・高速の増幅回路を加えることでさらなる高速化を実現しています。増幅回路を搭載したICカプラーはスレッショルド入力電流という特性を持ち、あるLED入力電流のしきい値を超えるとデジタル的に出力がオンまたはオフに切り替わります。したがって、アナログ信号をリニアに伝送することは出来ず、新製品はデジタル信号伝送のみに使用されます。
標準データ伝送レートは、TLP2362BおよびTLP2762Bが10 Mbps、TLP2368BおよびTLP2768Bが20 Mbpsに対応し、機器の高速化に貢献します。
動作温度とは、素子(デバイス)の機能を損ねることなく、素子(デバイス)を動作させることができる周囲温度範囲のことです。PLCの耐環境性で考慮されるべき項目の一つとして温度条件があります。周囲温度などの環境条件がPLCの寿命に大きく影響することが知られ、一般的に周囲温度40 °Cに規定されていることが多く見受けられます。動作温度が一定範囲を超えての使用は製品故障や製品寿命が短くなるというデメリットが発生します。新製品は、動作温度定格 (Topr) 125 °C (max) を実現し、機器の安全の確保に貢献できます。
(特に指定のない限り、Ta=25 °C)
品番 | TLP2362B | TLP2368B | TLP2762B | TLP2768B | |||
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データシート | PDF: 1,000KB | PDF: 1,001KB | PDF: 1,672KB | ||||
データ伝送レート (Mbps) | Typ. | 10 | 20 | 10 | 20 | ||
パッケージ | 名称 | 5pin SO6 | SO6L | ||||
寸法 (mm) | 3.7×7.0 (typ.)、 t=2.3 (max) |
3.84×10.0 (typ.)、 t=2.3 (max) |
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絶対最大定格 | 動作温度 Topr (°C) | -40~125 | |||||
出力電流 IO (mA) | Ta=25 °C | 25 | |||||
推奨動作条件 | 電源電圧 VCC (V) | 2.7~5.5 | |||||
IF立ち上がり時間[注2] tr(IF) (s) | 5 n~60 | ||||||
IF立ち下がり時間[注3] tf(IF) (s) | 5 n~60 | ||||||
VCC立ち上がり時間[注4] tr(VCC) (s) | 10 μ~60 | ||||||
VCC立ち下がり時間[注5] tf(VCC) (s) | 10 μ~60 | ||||||
電気的特性 | 供給電流 ICCH、ICCL (mA) | Max | 1 | ||||
スレッショルド入力電流 (H/L) IFHL (mA) | Max | 5.0 | |||||
スイッチング特性 | 伝搬遅延時間 tpHL、tpLH (ns) | Max | 100 | 60 | 100 | 60 | |
コモンモード過渡耐性 CMH、CML (kV/μs) |
Ta=25 °C | Min | ±50 | ||||
絶縁特性 | 絶縁耐圧 BVS (Vrms) | Ta=25 °C | Min | 3750 | 5000 | ||
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[注2] 入力順電流を0 mAから7.5 mAまで線形増加するのに要する時間です。
[注3] 入力順電流を7.5 mAから0 mAまで線形減少するのに要する時間です。
[注4] 電源電圧を0 Vから2.7 Vまで線形増加するのに要する時間です。
[注5] 電源電圧を2.7 Vから0 Vまで線形減少するのに要する時間です。
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