1-2 保護用ダイオードの使い分け (ESD保護用ダイオードと保護用ツェナーダイオード)

図1.5 過電圧パルスの分類
図1.5 過電圧パルスの分類

ESD保護用ダイオードはツェナーダイオードの一種で過電圧サージ保護、特に静電気放電 (ESD) に特化した製品です。主として短いパルス幅のESDや数マイクロ秒以下となる一部の誘導雷サージや開閉サージからの保護を行います。ツェナーダイオードのうちESDよりパルス幅が長く大きなサージに対する保護に特化したものを保護用ツェナーダイオードと呼んでいます。この保護用ツェナーダイオードはマイクロ秒以上の誘導雷サージや開閉サージなどの過電圧パルスからの保護に適しています。

表1.1 サージ種類

サージ種類

内容説明

静電気放電(ESD)

ESDは人体や物体の持つ浮遊容量に蓄積した電荷が接触や接近する事で放電する現象のことです。ESDは数千V に達することもありますが、ナノ秒オーダーの短パルスで以下の2つに比べるとエネルギーは低くサージ吸収面での対策は比較的容易です。湿度が低いときは発生頻度が高くなります。特に最近スマートフォンなどの移動体機器の普及に伴い、ESDが原因となる誤動作が問題となり対策が重要になってきています。

誘導雷サージ

誘電雷サージは雷などで発生する電磁パルスの影響を受け、電源ラインや通信ラインなどの長い配線のインダクタンスに誘導されるサージを指します。誘電雷サージも数千Vに達する高電圧のサージで、マイクロ秒オーダーからミリ秒オーダーまで長いパルスとなる大きなエネルギーを持つサージです。ESDに比べ対策を行う箇所は限定されますが、対策に使用する部品も高エネルギーを流すことのできる比較的大きな素子となります。誘電雷サージ以外に、雷が直撃して発生するサージを直撃雷サージと呼びます。こちらはエネルギーが高く保護対策は困難です。

開閉サージ

スイッチやリレーなどのオンオフ(開閉)時、急激な電流変化と回路や配線のインダクタンスにより、誘発される過渡的な過電圧のことを開閉サージといいます。回路内のインダクタンスと容量によって発生することから、電圧はESDや雷サージに比べ高くはありませんがナノ秒オーダーの短パルスからミリ秒オーダーの長いパルスとなります。ただし、パルスが長いためESDよりエネルギーが高いサージです。回路内のインダクタンスと容量の大きさによりデバイスを選択します。

過電圧サージ保護、特に静電気放電 (ESD) に特化し、主に信号ラインで信号波形に影響を及ぼすことなくESD保護を可能にした製品がESD保護用ダイオードで、容量は0.12~100 pFになっています。保護用ツェナーは高いサージエネルギーに対応するためにジャンクション面積が広く端子間容量Ctが100 pF~600 pFとなっており誘導雷サージや開閉サージの保護が可能です。表1.2に過電圧パルスの種類に対する適応性イメージを示します。

表1.2 各サージに対する効果のイメージ

 

 特徴比較

目的

各サージ対応

ESD

開閉サージ

誘導雷サージ

直撃雷サージ

ESD保護用ダイオード

Ct :

0.12~100 pF

マイクロ秒オーダー以下の

過電圧パルスから対象保護

×

保護用ツェナーダイオード

Ct :

100~600 pF

マイクロ秒以上の過電圧パルス保護

(ESD保護用途も可能)

×

注)当社製品におけるイメージ

1 TVSダイオード (ESD保護用ダイオード) とは

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