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逆降伏電圧にはツェナー降伏によるものとアバランシェ降伏によるものがあります。
ツェナー降伏
pn接合の逆電圧による電界により、空乏層でのp領域の価電子帯とn領域の伝導帯との距離が近くなり、p領域価電子帯の電子が量子力学的なトンネル効果によりn領域の伝導帯に通り抜けるようになります。トンネル効果による電流が増大していく現象をツェナー降伏といいます。ツェナー降伏について図 1.3 に示します。
アバランシェ降伏
pn接合に逆電圧を印加すると僅かですが電子が流れます。この電子は空乏層中で電界により加速され大きな運動エネルギーを持ちます。この加速された電子が結晶格子を構成する原子に衝突すると、原子はイオン化し正孔となり電子は伝導帯へ励起して自由電子となります。生成された自由電子も同様に加速され “雪崩”的に電子・正孔対を生成急激に増大します。この現象をアバランシェ降伏 (なだれ降伏) と呼びます。
アバランシェ降伏とツェナー降伏の比較
降伏電圧の高い製品は半導体の不純物濃度が低いため空乏層 (禁制帯) が広く、低い製品は不純物濃度が高いため空乏層 (禁制帯) が狭くなっています。空乏層が広いと通り抜ける距離が広がるためトンネル効果 (ツェナー降伏) が起こりにくくなり、アバランシェ降伏が支配的になります。不純物濃度が高く空乏層が狭いとツェナー降伏が生じやすくなります。温度の上昇に対して半導体は禁制帯幅Egが狭まり、ツェナー効果は発生しやすくなります。また温度上昇に対し半導体の結晶振動は激しくなりキャリアの移動度が低下します。このことによりアバランシェ降伏は起きにくくなります。ツェナー降伏電圧は負の温度特性、アバランシェ降伏電圧は正の温度特性を持ちます。一般的に、この2つの現象は降伏電圧6V前後に境界があり、低い場合はツェナー降伏、高い場合はアバランシェ降伏が支配的になります。従って同じ製品系列でも温度特性が異なることがあるので注意が必要です。