車載用PWM方式2ch H-Bridge DCブラシ付きモータードライバー集積回路 (IC)

カーボンニュートラルに向け車載モーター市場は拡大しています。どのような種類のモーターを使うのかはアプリケーションの特徴、モーターの長所、短所などから選択しますが、幾つかある種類の中でブラシ付きモーターは廉価性、操作容易性が好まれ、以前から主役を務めています。また車両の利便性、快適性の視点からも車載モーター市場は拡大しています。例えばボディー系では、オートドアノブシステム (Flush Door handle) など新しいアプリケーションが登場しています。
このような背景を踏まえ、今回当社は新しくPWM方式2ch H-Bridge DCブラシ付きモータードライバー「TB9053FTG/TB9054FTG」2製品を発売し、この分野のラインアップを拡充しました。

小型パッケージを採用

図1:製品パッケージ図
図1:製品パッケージ図

TB9053FTG/TB9054FTGは、チップデザインは同じですがパッケージが異なり、消費電力によって使い分ける仕様になっています。モーター負荷に流す電流が大きい場合、当社オリジナルの小型パワーQFNパッケージに封入したTB9053FTGを推奨します。一方消費電力が比較的小さい場合、実装しやすいウエッタブルフランク構造を採用したTB9054FTGを推奨します。(図1を参照)

TB9053FTGは高放熱性パワーパッケージで内部のチップとリードフレーム間に金属板を挿入しており、熱容量を高める事で過渡的な熱上昇を抑制。TB9054FTGは端子の一部にメッキが残るウエッタブルフランク構造で、実装検査性およびはんだ接合部の信頼性向上を実現。

3種類のモーター接続出力回路が構成可能

本製品の特長として2ch H-Bridge回路を内蔵していますが、外部配線でドライバー出力端子 (OUT1、OUT2、OUT3、OUT4) を短絡する事で、電流が2倍流せる1ch H-Bridgeとしても使用する事ができます。さらに用途を広げるため、4ch Half-Bridgeとしても使用する事が可能となっています。図2にブロック図および応用回路例を示します。

図2:TB9053/54FTGブロック図および参考応用回路例
図2:TB9053/54FTGブロック図および参考応用回路例

製品一つで二つのブラシ付きモーターを双方向に駆動する例。また本製品は、製品およびシステムの安全性を高める異常検出機能などを有する。

また、図3に本ICの3種類の出力回路とモーター接続のイメージを示します。

(1):2ch H-Bridge
(1):2ch H-Bridge
(2):1ch H-Bridge
(2):1ch H-Bridge
(3):4ch Half-Bridge
(3):4ch Half-Bridge

図3:3種類の出力回路とモーター接続イメージ

(1) は二つのブラシ付きモーター(電流ピーク5A)を2ch H-Bridge型ドライバーで双方向に駆動する例。(2) はH-Bridge型ドライバー2chを1chに短絡し、一つのブラシ付きモーター(電流ピーク10A)を双方向に駆動する例。(3) は四つのブラシ付きモーターやL負荷、または2相励磁のステッピングモーターを4ch Half-Bridge型で駆動する例。本製品は多様なアプリケーションを幅広くカバーする。

SPI通信のみでPWM駆動が可能

図4:SPIによるモーター駆動比較(従来方式 vs 新規方式)
図4:SPIによるモーター駆動比較(従来方式 vs 新規方式)

通常SPI通信は、本IC内部の設定や状態を外部に知らせる機能を有します。本製品はそれ以外にSPI通信のみでモーターを制御する事が可能です。複数のモーターを制御する場合、モーター数に比例してMCUのポートが増え、最悪の場合ポート数を増やすためMCUのパッケージサイズが大きくなる可能性があります。一方、本製品は内部でPWM信号が生成可能であり、SPI通信接続のみでモーター制御が可能となりポート数の増加を防ぎます。またディージーチェーンに対応しており、モーターを数多く使用する場合、MCUのポートを少なく構成できるので、コストダウンに大きく貢献できます。
図4と図5にイメージ図を示します。

左側は従来方式のPWM駆動信号をMCUから供給する例。右側はSPI信号のみで駆動する例。内部のクロック信号を使用しSPI信号にてPWM信号の生成が可能。

図5:外部PWM_CLKを使用した場合
図5:外部PWM_CLKを使用した場合

図4右の構成で精度が必要なPWM制御を行う場合、MCUから出力される精度の高いクロック信号を利用し実現が可能。

車載用の機能および検出回路を搭載

表1に搭載機能、表2に検出機能をまとめました。

表1:搭載機能一覧表
機能 概要 設定方法
スルーレート調整 7種類のスルーレートを内蔵。 SPIで設定。
電流リミット チョッピング方式の電流リミット方式。
また2種類の電流リミット値を内蔵。
電流リミット値の変更はSPIで設定。
Hi-side電流モニター Hi-sideに流れる電流の0.24%をモニターする。 CMx端子[注1]とGND間に抵抗を挿入し電流を電圧に変換。
Sleepモード 待機電流を下げる事が可能。 Sleep端子を使用。
Diag検出 各異常検出時DIAGx端子[注1]から検出信号を出力。 DIAGx端子[注1]にPull-up抵抗を接続。
検出回路の初期診断 IC内部のVBAT/VCC低電圧、過熱、過電流、動作時/非動作時負荷OPENの各検出回路の初期動作をチェック。 非動作時負荷OPEN検出以外は、電源起動時またはENx[注1]/ENBx[注1]端子でドライバー出力をOFFした時に診断実施。
非動作時負荷OPEN検出はSPI指示にて診断可能。
表2:異常検出機能一覧表
機能 異常検出結果の確認方法 異常検出結果の復帰方法
DIAGx端子[注1] SPI
VBAT
低電圧検出
DIAGx端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
自動復帰 自動復帰
VCC
低電圧検出
DIAGx端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
自動復帰 1WC[注2]を受信するまでラッチされる
過熱検出 DIAGx端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
自動復帰 自動復帰
天絡・地絡検出[注3] DIAG端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
ラッチタイプのため、ENx/ENBx[注1]端子でクリアが必要 1WC[注2]を受信するまでラッチ、または自動復帰がSPIで選択可能
動作時負荷OPEN検出[注4] DIAG端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
自動復帰 自動復帰
非動作時負荷OPEN検出[注5] DIAG端子[注1]または
SPI出力端子 (SDO)
自動復帰 自動復帰

[注1] xは1または2のチャネル番号を表現。
[注2] 1WCとは1回、Write(書き込み)によりフラグ信号をClearする意味。
[注3] モーターの相入力の状態をIC内部の出力MOSのドレイン、ソース間電圧で監視。
[注4] モーターに流れる電流を監視。
[注5] IC内部で生成した電流をモーターに流して監視。

本ICは、2022年に量産を開始した新製品となっています。カーボンニュートラル実現に向けた電動化の波はますます大きくなり、ドライバー内蔵品以外にもゲートドライバー品等含めたラインアップの拡充を図り車載モーター市場に貢献していきます。

関連情報

当社の車載ブラシ付きモータードライバー製品の詳細については下記ページをご覧ください。

車載ブラシ付きモータードライバー

製品の詳細については下記ページをご覧ください。

TB9053
TB9054

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