ショットキーバリアダイオード(SBD)は、逆回復時間(trr)がほとんど無い、順方向電圧(VF)が低い利点がありますが、反面リークが大きいなどの欠点もあります。当社SiC SBDでは構造を見直し、この欠点を改善しています。
SBDは半導体と金属を接合し、その仕事関数の違いからダイオードを実現しています。この接合面では分子構造が不連続/表面の凹凸/結晶欠陥などが生じることがあります。この欠陥などの多い境界面に高い電界が印加されると、リーク電流(Ir)と呼ばれる電流が流れます。
一般的な構造のショットキーバリアダイオードは図に示すように半導体側に空乏層が広がり、電荷(または電子)による電界は金属と半導体の境界面が最も高くなります。
これに対しJBS構造のSBDでは半導体表面よりn-層の一部に埋め込まれたp層とn-層の間に空乏層が広がります。逆バイアスの電圧が高くなるとp層の空乏層同士がパンチスルーし最大電界はp層直下に移動することになります。このことにより欠陥などの多い表面の電界が下がり、リーク電流を抑えることが可能となります。
通常のSBD(ショットキーバリア ダイオード)に順方向の電圧を印加した場合、図のように金属ーショットキー障壁ーSi(n-)-Si(n+)と電流が流れます。この時、Si(n-)層は不純物濃度が低いことから、比較的大きな抵抗成分を持ちます。このため、SBDのIF-VF特性は図のようになります。
本製品はPFCなどの回路での使用を意図しています。PFC部では電源のオン/オフ時や負荷変動時に瞬間的に大きな電流が流れることがあり、大電流動作を保証する必要があります。図のような特性では、デバイスが想定以上に発熱する可能性があります。
今回、MPS(Merged PiN Schottky)構造の概念を取り込んだ新規JBS構造の製品を開発しました。
MPS構造は図に示すように、SBDを構成するn-層の一部にP+層を埋め込んだ構造となります(当社ではJBS構造のp層の一部(斜線部)を巨大化し不純物濃度を高めた構成になっています)。このp+層と元々のSBDのn-層によるpn接合ダイオードは、高電流(高サージ電流)が必要となるタイミングでオンします。これより電流輸送能力が高まり、大電流時の順方向電圧の上昇を抑制し高サージ耐量をアップします。
MPS構造はアノード電極下の(p+)-(n-)-(n+)の構成を特徴とします。通常、n-層は高抵抗ですが、この構成の場合、順バイアス時にp層とn層からホール(正孔)と電子が流れ込み、電気的中性を保ちながら高い濃度で両者が存在するようになります。特に大電流でn-層は高濃度にドープされたように働き非常に低抵抗になります(伝導度変調)。その結果、図(IF-VF特性)に示すように、高電流でVFの低い特性を実現しています。
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