高度情報化社会の到来に伴い、日々扱われる情報量は飛躍的に増大し、データセンターや情報通信機器で消費される電力の増加が地球規模で問題となっています。そのため、データセンターや情報通信機器に電力を供給するスイッチング電源の高効率化要求が近年高まっています。当社では、スイッチング電源に適したMOSFETの開発を通じて電源の高効率化に貢献しています。
最新世代プロセスを採用した80V耐圧U-MOSX-Hシリーズ製品は、従来世代プロセスU-MOSVIII-Hの同耐圧製品に比べ、ドレイン・ソース間オン抵抗(RDS(ON))を約40%低減したことに加え、電源などのスイッチング用途に使用される際に重要な性能指数である「オン抵抗とゲート電荷量の積(RDS(ON)×Qg)※」、「オン抵抗とゲートスイッチ電荷量の積(RDS(ON)×QSW)※」、「オン抵抗と出力電荷量の積(RDS(ON)×Qoss)※」を改善しました。これによりU-MOSX-Hを搭載することで機器の低損失化を実現します。また、ゲートしきい値電圧(Vth)範囲の縮小、チャネル温度定格(Tch)の175℃化を実現し設計の省力化・自由度向上に貢献します。
※トレードオフの関係にあるオン抵抗と電荷量特性の積を算出し、スイッチング用途への適性を比較する指標。この値が小さい程、性能が優れていることを表します。
下表に、U-MOSX-Hシリーズ製品、U-MOSVIII-Hシリーズ製品それぞれのSOP Advanceパッケージ搭載の代表製品の主要特性を示します。U-MOSX-Hシリーズ製品は最新のプロセス技術により、ドレイン・ソース間オン抵抗の大幅な低減を実現しています。U-MOSX-Hシリーズ製品は、オン抵抗低減により、オン抵抗に起因する機器損失低減や、搭載素子数の削減による基板面積の縮小に貢献します。
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特性 |
U-MOSX-Hシリーズ |
U-MOSVIII-Hシリーズ |
|
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絶対最大定格 |
ドレイン・ソース間電圧 VDSS(V) |
80 |
80 |
|
チャネル温度 Tch(℃) |
175 |
150 |
||
電気的特性 |
ゲートしきい値電圧 Vth(V) |
@VDS = 10V, ID = 1.0mA |
2.5~3.5 |
2.0~4.0 |
ドレイン・ソース間オン抵抗 RDS(ON) typ(mΩ) |
@VGS = 10V |
1.9 |
3.3 |
|
ゲート入力電荷量 Qg typ(nC) |
87 |
59 |
||
ゲートスイッチ電荷量 QSW typ(nC) |
28 |
18 |
||
出力電荷量 Qoss typ(nC) |
90 |
77 |
||
入力容量 Ciss typ(pF) |
5870 |
4100 |
U-MOSX-Hシリーズは、最先端の微細化技術を用いセル構造を最適化することで、MOSFETの重要な性能指数であるRDS(ON)×Qg、RDS(ON)×QSWならびにRDS(ON)×QOSSを大幅に低減しました。U-MOSX-HシリーズとU-MOSVIII-Hシリーズの各性能指数の比較を下図に示します。これら性能指数の改善により、主要損失である導通損失、ドライブ損失、スイッチング損失、出力チャージ損失を減らし、電源機器の高効率化やデバイスの温度低減に貢献します。
RDS(ON):オン抵抗(導通損失に関する指標)
Qg:ゲート電荷量(ドライブ損失に関する指標)
QSW:ゲートスイッチ電荷量(スイッチング損失に関する指標)
QOSS:出力電荷量(出力チャージ損失に関する指標)
品番 |
TPH2R408QM |
TPN19008QM |
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データシート |
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パッケージ (幅×長さ×高さ mm) |
SOP Advance (N) |
TSON Advance |
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絶対最大定格 |
ドレイン・ソース間電圧 VDSS(V) |
80 |
80 |
|
チャネル温度 Tch(℃) |
175 |
175 |
||
電気的特性 |
ゲートしきい値電圧 Vth(V) |
@VDS = 10V, |
2.5~3.5 |
2.5~3.5 |
ドレイン・ソース間オン抵抗 RDS(ON) typ(mΩ) |
@VGS = 10V |
1.9 |
14.7 |
|
ゲート入力電荷量 Qg typ(nC) |
87 |
16 |
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ゲートスイッチ電荷量 QSW typ(nC) |
28 |
5.5 |
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出力電荷量 Qoss typ(nC) |
90 |
16.5 |
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入力容量 Ciss typ(pF) |
5870 |
1020 |