従来のガラス管ヒューズやチップヒューズは過電流による発熱で導電性部品が溶断しますが、物理的な溶断までには数s掛かってしまいます。また繰り返し使用可能なポリスイッチは熱膨張して抵抗が急激に増大するPTC[注1]を利用するため、過電流発生から保護まで数100ms~数s程度の時間がかかります。
一方で、電子ヒューズ (eFuse IC) は半導体で構成されたスイッチです。半導体回路で異常を検出し、即時にMOSFETスイッチで電流経路を遮断するため、これまでにない高速で回路を保護します。繰り返し使用可能なことはもちろんのこと、短絡保護にいたっては150 ns(Typ.)と従来のヒューズよりもおおよそ100万倍速い保護動作が可能です。
[注1]PTC:Positive Temperature Coefficient、正温度係数
電子ヒューズ 東芝 eFuse IC |
リセッタブルヒューズ (ポリスイッチ) |
チップヒューズ |
ガラス管ヒューズ |
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保護方法 |
MOSFETスイッチ での遮断 |
抵抗値増大 での電流制限 |
導電部溶断 |
導電部溶断 |
保護速度 |
150ns (Typ.) |
数100ms~数s |
数s |
数s |
繰り返し使用 |
可能 |
可能 |
不可 |
不可 |
eFuse ICは半導体集積を活かし、単なる遮断機能にとどまらず様々な保護機能を内蔵しています。
主な特長として、短絡保護、過電圧クランプ(OVP)、過電流クランプ(OCP)、過熱保護、突入電流抑制、逆流防止などの保護機能をもつことと[注2]、IT/AV機器の安全規格IEC62368-1の部品規格に適合していることがあげられます。
今回はヒューズとしての基本機能である短絡保護とラインアップ分類(過電圧クランプ/復帰動作)について紹介します。
[注2] OCP:Over Current Protection OVP:Over Voltage Protection
短絡保護機能とは負荷が何かのエラーで短絡(ショート)した際に過大な電流が流れるのを防ぐ機能です。東芝eFuse ICは短絡が発生してから150ns(Typ.)で電流を遮断する超高速の回路技術を持っており機器のロバスト設計に大きく貢献できます。また、従来のヒューズとは異なり一度の短絡では破壊されず、繰り返し使用可能ですので修理にかかる保守メンテネンス費用や復旧時間の削減にも効果的です。下の図はTCKE812が12Vの電源給電を行っている時に、急峻に出力電圧が理想的に短絡した場合のシミュレーション波形になります。
TCKE8xxシリーズは過電圧時クランプ電圧と復帰動作タイプでラインアップ展開をしています。
過電圧クランプ電圧は過電圧が負荷に印加されることを防ぐためにシステム電圧に応じて設定されています。クランプ電圧を6.04 V (Typ.)に設定した製品がTCKE805で、15.1 V (Typ.) に設定した製品がTCKE812です。過電圧クランプ機能が不要な場合は本機能を搭載していないTCKE800をご使用ください。
復帰動作タイプは、保護動作から通常動作へ復帰する方式で、2つのタイプを用意しました。オートリトライタイプは異常が解消されるまで自動的に復帰を試行します。一方、ラッチタイプは過熱保護動作時にラッチをかけ、異常の原因を取り除いた後に外部制御信号で復帰します。
*UVLO:Under Voltage Lock Out, 低電圧誤動作防止
品番 |
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データシート |
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在庫検索 |
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過電圧時クランプ電圧 VOVC Typ. (V) |
- |
6.04 |
15.1 |
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復帰動作タイプ |
オートリトライ |
ラッチ |
オートリトライ |
ラッチ |
オートリトライ |
ラッチ |
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パッケージ |
名称 |
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サイズ Typ. (mm) |
3.00×3.00, t=0.75 Max |
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動作 範囲 |
入力電圧 VIN (V) |
4.4 ~ 18 |
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出力電流 IOUT (A) |
0 ~ 5.0 |
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過電流リミット精度 (%) |
±11 @Ta= -40 ~ 85℃、ILIM=4.38A |
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オン抵抗 RON Typ. (mΩ) |
28 |
下記リンクを参照ください。