高速信号にACカップリングコンデンサーを使用する事で、異なるコモン信号電圧を持つTX、RX間での通信が可能になります。ACカップリングコンデンサーはバススイッチが動作するコモン信号電圧が供給されるように配置する必要があります。
最初に、高速差動信号にACカップリングが必要な理由を説明します。
高速信号にACカップリングが必要な理由はDC成分を信号から排除することです。信号のコモン信号電圧はDC成分であるため、ACカップリングコンデンサーを使用することで異なるコモン信号電圧を持つTX、RX間でAC成分のみを伝送することができます。
以下で具体的な回路例を用いて説明します。
最初にバススイッチを使わないACカップリングコンデンサーの使用例を以下の図-1を用いて説明します。
この例はTXとRXが異なる基板上に配置されており、信号ラインがコネクターで接続されている例です。
このようにTXとRXがコネクターで接続された異なる基板上に配置されている場合には、TXとコネクターの間にACカップリングコンデンサーを配置することが推奨されます。
この例での信号のコモン信号電圧は、ACカップリングコンデンサーを通過する前にはTXから供給され、ACカップリングコンデンサーを通過した後にはRXから供給されます。
次に、バススイッチを使用したACカップリングコンデンサーの使用例を以下の図で説明します。
この例では、ホストボードと2つのデバイスボードを排他的に接続し、2:1 Mux/1:2 De-Muxタイプのバススイッチを使用してホストボードが接続するデバイスボードを選択する例を3つ示します。
この時、バススイッチには、動作範囲内のコモン信号電圧が供給されるようにACカップリングコンデンサーを配置する必要があります。例えば、TDS4A212MX、TDS4B212MXには0~2.0Vの範囲でコモン信号電圧を与えてください。(表-1)
項目 | 記号 | 定格 | 単位 |
---|---|---|---|
電源電圧 | VCC | 1.6~3.6 | V |
入力電圧 (/OE、SEL) | VIN | 0~3.6 | V |
差動信号電圧 (peak to peak) | VI/O (Diff) | 0~1.8 | V |
コモン信号電圧 | VI/O (Com) | 0~2.0 | V |
動作温度 | Topr | -40~85 | °C |
入力上昇, 下降時間 | dt/dv | 0~10 | ns/V |
注 : 動作範囲は動作を保証するための条件です。
使用していないコントロール入力は VCC、もしくはGNDに接続してください。
図-2の例は、ACカップリングコンデンサーがバススイッチ (Mux/De-Mux) とデバイスボードの間に配置される例です。
この配置例では、バススイッチ (Mux/De-Mux) にはホストICからコモン信号電圧が供給され、デバイスボードからは供給されません。そのため、デバイスボード側のコモン信号電圧がバススイッチ (Mux/De-Mux) の動作範囲外の場合でも接続が可能となり、ホストボードが接続できるデバイスボードの自由度が向上します。
図-3の例は、ACカップリングコンデンサーがバススイッチ (Mux/De-Mux) とTXの間に配置される例です。
この配置例では、上記のDe-Muxを通過する経路 (青線) はデバイスボード (RX) からコモン信号電圧が供給され、Muxを通過する経路 (赤線) ではホストIC (RX) からコモン信号電圧が供給されます。この配置例は、1つ目の例に比べて使用するコンデンサーの数が少ないことが特長です。
図-4の例は、コンデンサーをバススイッチ (Mux/De-Mux) の両側に配置する例です。
この例では、バススイッチ (Mux/De-Mux) の両側にACカップリングコンデンサーが配置されているため、ホストICとデバイスボードのどちらからもコモン信号電圧は供給されません。そのため、別にコモン信号電圧を供給する必要があります。ホストICやデバイスボードから供給されるコモン信号電圧がバススイッチ (Mux/De-Mux) の動作範囲外である場合、この配置の使用を推奨します。そのため、図のように10kΩ以上の抵抗で0~2.0Vの範囲でコモン信号電圧を与えてください。
以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。