MOSFETには大きく分けて横型MOSFETと縦型MOSFETがあります。
これらは電流の流れる方向が、表面に平行(横方向)であるか垂直(縦方向)であるかで分類されます。
ここでは主流であるN-ch MOSFETを中心に説明します。N-ch MOSFETでは、p型基板(ボディと呼ばれる)の中にソースとドレインとなる2つのn型領域が形成されています(図-1 aを参照)。その上には、薄い酸化膜を介してゲート電極が配置され、ゲートはソース・ドレインとは電気的に絶縁されています。各領域には電極がありn型領域の2つの端子はソース(S)とドレイン(D)、制御端子である絶縁膜上に配置された電極はゲート(G)と呼ばれます。なお、ボディ端子はほとんどの場合、ソース電極(最低電位)に接続されます。
ゲート電圧が印加されると、ゲートとボディ間の電位差によって基板表面に反転層が形成されます。この反転層がソースからドレインへの電流経路(チャネル)となります。さらに、ドレイン・ソース間に電圧VDSが加わると、チャネルには電位勾配が生じ、ドレイン側の電位はソースより高くなります。この電位差が大きくなると、チャネルのドレイン側がピンチオフし、チャネルは途中で途切れます。ドレイン端には空乏領域が広がり、キャリアはこの領域を電界によりドリフトし、ドレインに到達します。これがMOSFETの飽和動作です。
飽和の詳細は、FAQ「MOSFETの動作」をご参照ください。
横型MOSFETと縦型MOSFETの基本的な構造を図-1に示します。
汎用的な横型構造プロセスとしてはプレーナーゲート構造が挙げられます。縦型構造では特性を大幅に向上させたトレンチゲート構造やスーパージャンクション(SJ)構造などの縦型構造が主流です。また、最近ではRESURF(Reduced Surface Field)原理を応用したフィールドプレート(FP)構造が開発されています。
a) 横型構造
表面にソース(S)、ゲート(G)、ドレイン(D)の端子、裏面にボディ(B)の端子があります。ドレイン側のn+層の外側にはn-層が取り囲むように描かれ、耐圧を維持するためにゲート直下でソース側に少し伸びています。
b) 縦型構造
表面にソース(S)とゲート(G)、裏面にドレイン(D)の端子があります。ソースのn+層を取り囲むようにp層があり、この部分はp-ボディと呼ばれます。
図-1 N-ch MOSFETの構造(縦型と横型)
この図はN-ch MOSFETの横型構造と縦型構造の簡易断面図を示しています。
それぞれの構造によるMOSFETの特徴:
横型構造
縦型構造
MOSFETのドレイン・ソース間の耐圧はn-ドリフト層(ドレイン)の不純物濃度を下げることによって高くすることができます。ただし、この不純物濃度を下げると耐圧は上昇しますが、同時にオン抵抗は高くなってしまいます。
横型構造: ドレインとの間に低濃度のn-層を設けることで、ある程度は耐圧を上げることが可能です。オン時にはドレイン・ソース間に流れるドレイン電流IDは、ドレインからこのn-層の表層を通り反転層を経由してソースに流れます(図-2 a 黄色のライン)。不純物濃度の低いn-層はオン時には抵抗体になるため、高耐圧で低抵抗化するためには広い面積が必要となります。
縦型構造: 裏面がドレイン電極です。この広範囲なドレインからIDは反転層に向かって流れます(図-2 b 黄色のライン)。横型構造と同様にn-層の濃度を下げることで高耐圧化が可能となります。横型構造と異なり、抵抗体となるn-層に広く電流が流れるため、横型構造に比べ狭い面積で低いオン抵抗(≒ 高電流対応)を実現できます。同様に、同じオン抵抗であれば縦型は高い耐圧VDSSを実現できます。
a) 横型構造
ドレインからソースへ電流が横方向に流れます。電流はn+ドレイン領域からn-層を経由し、ゲート直下の反転層(チャネル)を通ってソースに到達します。
b) 縦型構造
ドレインからソースへ電流が縦方向に流れます。電流は裏面のドレインからn-層を通り、ゲート酸化膜と接するp-ボディのゲート酸化膜直下に形成される反転層を経由してソースに到達します。
図-2 横型・縦型N-ch MOSFET オン時の電流経路
この図は、図1で示した横型構造と縦型構造のN-ch MOSFETにおけるオン状態でのドレインからソースへの電流の流れを示しています。
縦型構造は横型構造に比べて、入力容量Cissや帰還容量Crssが大きくなります。
縦型構造と横型構造で最も異なる点は、図-3に示すようにゲート・ドレイン間の容量です。横型構造ではゲート電極に対向する部分はボディのp層です。したがってゲートがドレインと対向する部分はごくわずかです。これに対し、縦型構造ではゲート電極に対向する部分はドレインのn-層です。このため縦型は横型に比べCGDが大きくなります。
ゲート・ソース間容量をCGS、ゲート・ドレイン間容量をCGD、ドレイン・ソース間容量をCDSとすると、回路設計などで用いられる入力容量Ciss、帰還容量Crss、出力容量Cossは下式で表されます。
このため縦型構造は横型構造に比べCissやCoss、Crssが大きくなります。
a) 横型構造
横型構造では、ゲートとドレイン側のn⁻層との間に容量が形成されますが、その対向面積は小さいためCGDは小さくなります。
b) 縦型構造
縦型構造では、ゲートと対向するn⁻層の面積が広く、ゲート・ドレイン間容量CGDが大きくなります。
図-3 N-ch MOSFET ゲート・ドレイン容量 CGD(縦型構造と横型構造)
この図は図-1の構造図を用いて、横型構造と縦型構造におけるゲート・ドレイン間容量CGDがどの部分に生じるかを示しています。
このようなことを背景に、横型MOSFETは無線通信機の出力(RFアンプ)に、縦型はスイッチング電源やDC-DCコンバータ、ロードスイッチなどの電源回路に使用されています。縦型構造に関しては、性能改善のために更なるプロセス改善が進められています。このプロセス改善の目的の一つはオン抵抗低減です。
以下にMOSFETのオン抵抗(RDS(ON))について説明します。
MOSFETのドレイン・ソース間の耐圧 VDSS とオン抵抗 RDS(ON) では、VDSS を上げると RDS(ON) が上がる関係にあります。また抵抗 R は、断面積 S と長さl、抵抗率 ρ を使って以下のように示されます。
R = ρ x l / S
従って、l を短く、S を広く、ρ を低くすれば抵抗は低くなります。半導体の場合、抵抗率 ρ は不純物濃度を N、移動度を μ、電子電荷を q とすると下式になります。
ρ = 1 / ( q x μ x N )
ρ を下げるためには N、μ、q を大きくすれば良いわけですが、qは物理定数、μは材料・物性に強く依存し、プロセスで自由に増やすのは容易ではありません。したがってρを下げるには主に濃度Nを上げることが有効です。唯一濃度 N を高くすることで抵抗が下がることがわかります。
MOSFET オフ時にドレイン・ソースに逆バイアス VDSS を印加した場合、この逆バイアスに比例して空乏層が伸びます。また、不純物濃度 N が低くなるほど、空乏層はより遠くまで伸びることになります。空乏層内では、多数キャリアは存在せず不純物イオン(固定電荷)のみが存在していると考えます。この固定電荷に起因する電界の合算値が臨界電界 Ecritical を超えるとアバランシェ降伏が生じます。このアバランシェ降伏が生じない最大電圧が耐圧 VDSS です。このように、N を上げると R は下がるが、同時に VDSS も下がる、N を下げると R は上がるが、VDSS は上がるというトレードオフの関係は主に不純物濃度 N によります。
N-ch MOSFETではゲート・ソース間にオン電圧を印加すると、ゲート直下のp層に反転層が形成します。この反転層はp層でありながら電子が過多な状態となっており、n層と同様の状態になっています。この反転層(チャネルとも呼ばれます)により、ドレインとソースが導通しMOSFETはオンとなります。オンの状態には線形領域と飽和領域がありますが、ここでは線形領域におけるオン抵抗について説明します。飽和領域などのMOSFETの動作に関する説明は、以下のFAQを参照ください。
MOSFETの動作について教えてください
ドレインからソースに流れる電流の経路を図-4 aに示します。この電流が流れる領域によって抵抗の生じる要因が異なります。これらは図-4 bに示す抵抗に分けられます。それぞれの抵抗について少し説明します。
前に述べたように、RDS(ON)とVDSSはトレードオフの関係にあります。従って、VDSS = 40V のMOSFETと VDSS = 600V のMOSFETではオン抵抗(RDS(ON))に占めるこれらの抵抗の比率が異なります。特に主にVDSSに影響するドリフト領域の抵抗Rdriftの占める割合は、高耐圧のMOSFETほど大きくなります。
その割合は、同じプレーナーゲートタイプのMOSFETの場合(製品によって変わるので精度のある数字ではありませんが)以下のようになります。
40V:RCH = 10%、RJFET = 40%、Rdrift=40%、Rsub =10%
600V:RCH = 1%、RJFET = 20%、 Rdrift=80%、Rsub =0%
従って、ターゲットとする耐圧によってオン抵抗を低減する手法も異なります。
a) 電流の流れ
オン状態では、裏面のドレインから電流が流れ、ソース間に向かって流れます。
b) オン抵抗RDS(ON)
オン抵抗は、チャネル抵抗RCH、JFET抵抗RJFET、ドリフト抵抗Rdrift、基板抵抗Rsubに分けられます。JFET抵抗は縦型構造で顕著な抵抗です。
図-4 縦型N-ch MOSFET オン時の電流の流れとオン抵抗
縦型N-ch MOSFETにおけるオン状態の電流経路と、オン抵抗を構成する要素を示しています。
従来構造であるプレーナーゲート構造(ここまで縦型構造として扱ってきたものと同じ構造です)と最も異なる点は、ゲートの配置です。プレーナーゲート構造では、デバイス表面にゲート電極を乗せるように配置していましたが、トレンチゲート構造ではデバイスの表面から溝を掘りゲート電極を埋め込む構造となっています。(図-5 トレンチゲート構造とプレーナーゲート構造)反転層は従来の横方向に対し、縦方向に形成されることになります。このことによって、下記の利点があります。
a)トレンチゲート構
造トレンチ構造の簡易断面図です。反転層はゲートに沿う形で縦方向に形成されます。これにより、チャネル密度を高め、チャネル抵抗を低減できます。また、JFET抵抗の影響も軽減できます。
b) プレーナーゲート構造
これまで説明してきた縦型構造です。反転層は表面に沿って横方向に形成されます。このため、電流経路が狭まりやすく、JFET抵抗の影響を大きく受けます。
図-5トレンチゲート構造とプレーナーゲート構造 (N-ch MOSFET)
N-ch MOSFETにおけるトレンチゲート構造とプレーナーゲート構造の断面を比較しています。最も異なる点は、反転層の形成方向であり、プレーナー構造では横方向、トレンチ構造では縦方向に形成されます。
a) トレンチゲート構造
電流は縦方向に広く流れ、JFET抵抗の影響はほとんどありません。
b) プレーナーゲート構造
電流は横方向に狭い経路を通るため、JFET抵抗の影響を大きく受けます。
図-6 トレンチゲート構造とプレーナーゲート構造における電流の流れ
この図は、トレンチ構造とプレーナー構造の電流経路を比較し、JFET抵抗の影響度合いを示しています。
MOSFETの高耐圧化を図るためには、ドリフト領域(n-層)の濃度を下げ、同時にn-層の厚みを増す必要があります。しかし、これによりMOSFETのオン抵抗を構成するドリフト抵抗が増加する問題が生じます。この解決策としてスーパージャンクション構造が採用されています。
従来のプレーナー構造は平面的な構造であるため、電界はn層(n-層)とp層の境界面で最も高くなります。これに対し、スーパージャンクション構造はn-層の一部にp層(Pピラー層)を柱状に形成し、P-N層を交互に配置する構造です。このため、n層(n-層)とp層の境界面は縦方向(深さ方向)に存在します。このpn接合に沿って空乏層が広がり、高電圧が印加されるときには、この柱状部分が完全空乏化します。
電界強度は従来構造と同様に境界面で最も高くなりますが、電界は縦方向(柱状に沿って)に分散され均一化されます。これにより、同じ不純物濃度でドレイン・ソース間に従来構造より高い電圧(ドレイン・ソース間電圧 VDS)を印加することが可能となります。これは、同じ耐圧(VDSS)であれば、より低オン抵抗(RDS(ON))のMOSFETが実現できることを意味します。
a) プレーナーゲート構造
従来の縦型構造で、n層とp層の境界面は平面的に存在します。高耐圧化のためにはドリフト層(n⁻層)の不純物低濃度化と厚みを増す必要がありますが、この構造では電界が境界面に集中しやすく、オン抵抗低減には構造的な制約があります。
b) スーパージャンクション構造
n層内に柱状のp層を形成し、P-N層を交互に配置する構造です。高電圧印加時には柱状部分が完全空乏化し、電界が均一化されます。
図-7 スーパージャンクション構造とプレーナーゲート構造(N-ch MOSFET)
この図はMOSFETの高耐圧化を実現するための構造比較を示しています。スーパージャンクション構造では、n層内にp層(Pピラー)を柱状に形成し、P-N層を縦方向に交互配置することで、電界を横方向に分散しやすい構造となり、高耐圧化と低オン抵抗の両立を可能にします。
a) プレーナーゲート構造
・VDS小:空乏層はドリフト層(n⁻層)に部分的に広がり、電界は接合付近に集中します。
・VDS大:ドリフト層全体が空乏化しますが、電界は依然として境界面に集中しやすく、高電圧時の性能に制約があります。
b) スーパージャンクション構造
・VDS小:空乏層はまだ完全に広がっておらず、電界は局所的に分布します。
・VDS大:交互に配置された P-N 層全体が完全空乏化し、電界が横方向に分散して均一化されます。これにより電界集中が抑えられ、高耐圧化が可能になります。
図-8 スーパージャンクション構造とプレーナーゲート構造 MOSFETオフ時の電界の状況
この図はオフ状態でドレイン・ソース間電圧VDSが小さい場合と大きい場合の電界分布を比較しています。赤点線に沿ってソースからn-層→p層→n-層を通る電界強度を各図の右側に示しています。
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