抵抗内蔵型トランジスター(BRT)のスイッチングスピードを速くしたい

バイポーラートランジスターのスイッチングスピードは図-1に示すように定義されています。
オフ⇒オンへの移行時にDelay time(td)とRise time (tr)、オン⇒オフへの移行時にStrage time (tstg)とFall time (tf)の時間が必要です。BRTでの測定例を表-1に示します。
測定は常温でVCC=5V、入力電圧を0Vと5Vで切り替えています。負荷抵抗は1kΩになります。

BRTのスイッチング時間測定例
Type R1 R2 tr (ns) tstg (μs) tf (μs)
RN1401 4.7 4.7 38 1.89 0.11
RN1402 10 10 60 2.25 0.13
RN1403 22 22 118 2.41 0.21
図-1 スイッチング時間 測定回路と定義
図-1 スイッチング時間 測定回路と定義

BRTは主にスイッチとして使用され、オン時トランジスターは飽和状態になります。このため、オン⇒オフ時にベースに蓄積された少数キャリアを放出する時間 tstgがスイッチング時間全体を通して支配的な時間となります。
このtstgを短縮するためには、以下の2点を考慮する必要があります。

a)過剰キャリアを素早く放出する

ベースに蓄積された過剰キャリアは、前段の回路構成によって異なりますが、R2を通って放電されます (前段の出力が“L”が低インピーダンスの場合、R1も放出経路になります) 。従って、R2の小さい素子が適しています。

b)可能な限り過剰キャリアを蓄積を少なくする

BRTオン時の飽和を浅くするということになります。内部トランジスターのベースに入力される電流 Ibを低くする必要があります。 
1) BRTの入力電流 IBを小さくする 
2) 内蔵トランジスターのベース電流を小さくする (R2を流れる電流を大きくする) 
この2点になります。従って抵抗R1が大きく、抵抗比 R1 / R2の大きな素子が適しています。ただし、このb)の対策は飽和が浅くなりVCE(sat)が大きくなる可能性がありますので注意が必要です。

表-2 R2を可変した場合
表-2 R2を可変した場合
表-3 R1を可変した場合
表-3 R1を可変した場合