バイポーラートランジスターをコレクター、エミッター逆接続で使用しても良いのでしょうか?

バイポーラートランジスターは逆接続では性能が出ないばかりでなく破壊の要因になりますので通常の接続でご使用してください。トランジスターは正常な接続で最良の電気的特性が出せる様に設計されています。逆接続は性能の悪いトランジスターとして動作はしますが、絶対最大定格で規定されているエミッター・ベース間電圧(VEBO)により、印加できる電圧が非常に低くなります(表-1)。

バイポーラートランジスターは一般的にhFEを高くするように設計しています。hFEを高くするためには、エミッターの多数キャリア(例えばnpnの場合は電子)を数多くベースに注入し、効率よくベースを通過させコレクターに到達させなければなりません。また耐圧(コレクター・ベース間電圧 VCBO)を高くするために、コレクターの空乏層をコントロールする必要があります。このために以下の3つの対応をしています。

  1. ベースに対しエミッターのドーピング濃度(不純物濃度)を高くする
  2. ベースの厚みを薄くする
  3. コレクターのドーピング濃度(不純物濃度)を下げる

従って、各領域の不純物濃度は エミッター >> ベース > コレクターの関係となります。
通常のトランジスターでは低濃度のコレクターにより耐圧(VCBO / VCEO)を高く保っています。逆接続すると高濃度のエミッターがコレクターの役割をすることになり、印加できる電圧(VEBO)は非常に低くなります。
逆接続をした場合、上記の濃度関係が満たせないことになりhFEは低下しトランジスターとしての機能を果たさなくなるだけでなく、トランジスターのオフ時に定格(VEBO)を超える可能性があります。このことにより、劣化や破壊に至ることも考えられます。逆接続での使用はしないでください。

*:現時点、ミューティング用トランジスターは製品ラインナップにありません。

表-1 バイポーラートランジスター 絶対最大定格(2SC2712)
表-1 バイポーラートランジスター 絶対最大定格(2SC2712)

関連リンク

以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。