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過渡熱抵抗を用いて、SOA(安全動作領域)の熱制限領域を計算しています。バイポーラートランジスターに単発パルスを加え、その時に発生する熱を印加した電力で割った物が熱抵抗値で、これをパルス時間単位で表したものが過渡熱抵抗(過渡熱インピーダンス)です。SOA(安全動作領域)の熱制限領域はこの過渡熱抵抗から計算されています。
半導体は接合部に過度な電流が流れたとき、接合部で消費される電力により接合部の温度が上昇し劣化・破壊します。このため製品のデーターシートの絶対最大定格に接合温度を規定しています。(表-1)
pn接合部に直流の電流を印加すると熱が発生します。この熱は放熱板やパッケージ表面、リードを経由して基板や空気中に放熱されます。このことにより、印加された直後から接合部の温度上昇が始まりますが、ある温度で飽和します。熱抵抗はこの温度変化を加えた電力で割った値で、熱の伝わりにくさを表します。飽和しているとき、この値を飽和熱抵抗(熱抵抗)、変化がある過渡期の値を過渡熱抵抗(過渡熱インピーダンス)と呼びます。図-1は単発パルス電力を印加したときの過渡熱抵抗をグラフにしています。これを用いて単発パルスを印加したときのジャンクション温度を求めることができます。また、連続パルス電力を印加した場合のジャンクション温度を推定することも可能です。詳しくはアプリケーションノート「バイポーラートランジスターアプリケーションノート:熱安定度と放熱設計」を参照ください。
過渡熱抵抗と安全動作領域(SOA)の関係は下記に示す関係になっています。
Tj(max) = rth(j-c) × Po + Ta
図-1 過渡熱抵抗のグラフから、パルス幅10 msecのときの過渡熱抵抗は
rth(j-c) = 9 ℃ / W
Tj(max)となる電力尖頭値は
150 ℃= 9 ℃ / W*Po + 25 ℃
Po = 125 / 9 = 14 W
例えば VCE = 20 Vのときに許容できる電流は以下となります。
14 / 20 = 0.7 A
従って、図-2のSOAのグラフで青の点線で示される線が過渡熱抵抗から決まる領域になります。Tj(max)を超えないよう、斜線範囲内で使用しなければなりません。この過渡熱抵抗から決まる領域を熱制限領域と呼びます。
以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。