IGBTを使ったハードスイッチングとソフトスイッチングについて教えてください。

ハードスイッチングとソフトスイッチングは、インバーターやコンバーターなどの電力変換装置やスイッチング電源で使用されるスイッチング技術です。オン/オフ切り替え時の電流と電圧の関係に基づいて分類されます。ソフトスイッチングはハードスイッチングの問題点(スイッチング損失や電源ラインへのノイズ(EMI含む)など)を改善するために開発された技術です。

図1 ハードスイッチング 波形と動作軌跡:ハードスイッチングにおける波形と動作軌跡。オン・オフの遷移時に電流と電圧が重なり、スイッチング損失が発生する様子を示す。
図1 ハードスイッチング 波形と動作軌跡

ハードスイッチング
ハードスイッチングは、スイッチングデバイスを単純にオン/オフする方式(デバイスの電流遮断能力によって直接オン/オフを行う方式)です。スイッチング動作波形と動作軌跡を図1に示します。オン/オフ切り替え時(スイッチング遷移期間)には、電圧と電流の両方がデバイスに印加される状態があり、オンからオフ、またはオフからオンへと急激に変化します。そのため、サージ電圧やスイッチングノイズ、大きなスイッチング損失が発生します。この方式は、単純なスイッチ用途やモーター駆動用インバーター装置、スイッチング電源などに適用されています。

図2 ソフトスイッチング 波形と動作軌跡:オン・オフの遷移時でも電流と電圧がほとんど重ならず、スイッチング損失が非常に小さい様子を示す
図2 ソフトスイッチング 波形と動作軌跡

ソフトスイッチング
ソフトスイッチング方式は、LC共振回路を使用して、電流や電圧がゼロのタイミングでデバイスをオン/オフします。この方式では、オン/オフ切り替え時の電流と電圧のタイミングを共振周波数によって調整することで、スイッチング時の電圧と電流の波形が交差する期間を最小限に抑えます。代表的な動作波形と動作軌跡を図2に示します。代表的な方式としては、直列LC回路を用いて電流がゼロの状態でスイッチングを行うZCS (Zero Current Switching)と、並列LC回路を用いて電圧がゼロの状態でスイッチングを行うZVS (Zero Voltage Switching) があります。電圧または電流がゼロに近い状態で素子がオン/オフするため、スイッチングに伴うノイズや損失が小さくなります。IGBTの代表的なソフトスイッチング応用として、IH炊飯器、調理器、電子レンジなどがあります。また、図からもわかるように、ハードスイッチングと比較してソフトスイッチング方式は、安全動作領域 (SOA) の観点からもデバイスへの負荷が小さく、信頼性が向上します。

図3 ハードスイッチング スイッチングノイズが重畳した波形と動作軌跡:サージに起因するスイッチングノイズが重畳すると、SOAを超える可能性がある
図3 ハードスイッチング スイッチングノイズが重畳した波形と動作軌跡

ハードスイッチング、ソフトスイッチングともサージなどに由来するスイッチングノイズがオン/オフ遷移時に発生します。(図3.)

  • ターンオン:電流 ICにスイッチングノイズ Eが重畳し、動作軌跡としてはA → E → Bを描きます
  • ターンオフ:電圧 VCEにスイッチングノイズ Dが重畳し、動作軌跡としてはB → D → Aを描きます

これによって、最大定格や安全動作領域(SOA)を超える可能性があるため、確認が必要です。

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