ハーフブリッジDC-DCコンバーターがデータセンターの電力を削減

データセンターでは、消費電力を抑制するため、48 Vバスラインの新しいラック・アーキテクチャーの採用が始まっています。このような48 Vバスシステムを実現するためのハーフブリッジDC-DCコンバーターの設計技法を紹介します。

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はじめに

データストレージに対する需要の増大に対応するため、データセンター (図1) の拡張と新設が求められています。しかし、無計画な拡張は、最終的に電力需給の逼迫を招くため、データセンターの消費電力を抑制することが、併せて求められています。

データセンターの消費電力を削減する非常に効果的な方法のひとつは、サーバーラックに48 Vバスラインを使用することです。とはいえ、このような新しいアーキテクチャーは、慎重に選択された高効率のMOSFETを使用しないと実用にはなりません。

これは、図1:データセンターは常に膨大な電力を必要とするが、48 Vバスシステムは、正しく設計されれば、電力損失を削減することが実証されているの画像です。
図1:データセンターは常に膨大な電力を必要とするが、48 Vバスシステムは、正しく設計されれば、電力損失を削減することが実証されている

第1章: オープン・ラック・アーキテクチャーの電力損失への対処

より優れた効率を達成するために、オープン・コンピュート・プロジェクト (OCP) が提案するオープン・ラック・アーキテクチャーでは、従来の12 Vバスラインではなく48 Vバスラインを使用することで、電力損失に対処しています。

この仕組みを理解するには、まず、電線における電力損失はI2Rで計算されることを思い出してみましょう。ここで、Rは抵抗、Iは電流です。この電流と抵抗の単純な関係に基づくと、同じ値の抵抗に対し、より低い電流を流せば、より少ない電力損失となり、より高い効率につながります。

オープン・ラック・アーキテクチャーにおいて、同じ量の電力が12 Vバスラインを通してサーバーラックに供給される時と48 Vバスラインを通して供給される時の電力損失を考えてみましょう。48 Vバスラインを通過する電流は、12 Vバスラインを通過する電流の1/4しかありません。したがって、48 Vバスラインと12 Vバスラインの抵抗が同レベルであると仮定すると、48 Vバスは12 Vバスの1/16の電力しか損失がありません。

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第2章: ハーフブリッジDC-DCコンバーターを使用したオープンラック

理論を踏まえたオープン・ラック・アーキテクチャーの実現のため、図2に示すようなハーフブリッジDC-DCコンバーターの採用を考察します。このようなコンバーターは、48 Vのバスライン電圧を効率的に1.2 Vに降圧することができ、システムの総消費電力を削減します。

これは、図2:簡略化したハーフブリッジDC-DCコンバーターの画像です。
図2:簡略化したハーフブリッジDC-DCコンバーター

ハーフブリッジDC-DCコンバーター上のMOSFET動作に起因する損失は、スイッチング損失に加え、ゲートドライブ損失、出力容量損失、ダイオード逆回復損失、導通損失があり、これらすべてがDC-DCコンバーターの効率に影響を与えます。
ここで単純化のために、MOSFET二つで構成される図3に示す非絶縁型降圧DC-DCコンバーターに置き換えてこれら損失を考えます。ハーフブリッジDC-DCコンバーターの損失を考える場合は、図3のHigh-side MOSFETを図2の1次側素子 (TR1、TR2) に、図3のLow-side MOSFETを図2の2次側素子 (TR3、TR4) に置き換えてください。
非絶縁型降圧DC-DCコンバーターの各MOSFETには図3に示した損失が発生します。これらの損失は、適切なMOSFETを選択することで大幅に削減できます。

これは、図3:非絶縁型降圧DC-DCコンバーターにおける電力損失要因の画像です。
図3:非絶縁型降圧DC-DCコンバーターにおける電力損失要因

第3章: 当社のアプローチ

当社は、図4に示す48 VバスラインをサポートするハーフブリッジDC-DCコンバーターのリファレンスデザインを開発し、48 Vバスシステムで最高の効率レベルを達成するために必要とされる、効果的で実用的なMOSFETについて検討してみました。
このハーフブリッジDC-DCコンバーターの仕様を表1に、ブロック図を図5に示します。
適切なMOSFETを選択することで、わずか160 mm x 100 mmの基板サイズにて、トータル効率92.8 % (Vin=54.5 V、30 %負荷時) を達成しました。

これは、図4:48 VバスシステムをサポートするハーフブリッジDC-DCコンバーターリファレンスデザインの画像です。
図4:48 VバスシステムをサポートするハーフブリッジDC-DCコンバーターリファレンスデザイン
これは、表1:ハーフブリッジDC-DCコンバーター仕様の画像です。
これは、図5:48 Vバス電圧を1.2 Vに直接変換する1.2 V/100 A出力絶縁型DC-DCコンバーターの画像です。
図5:48 Vバス電圧を1.2 Vに直接変換する1.2 V/100 A出力絶縁型DC-DCコンバーター

1次側で影響が大きいスイッチング損失の観点では入力容量が小さいMOSFETが優位ですが、最大負荷時には平均で3 A程度の電流が流れるため定常損失の影響も無視できません。そこで、入力容量とオン抵抗のバランスに優れたTPN1200APLを採用しました。

2次側はMOSFETがオンする前に内蔵ダイオードが動作するためスイッチング損失の発生は非常に小さく、導通損失の占める影響が支配的です。従って、当社ラインアップの中で0.41 mΩと最もオン抵抗の小さいTPHR6503PLを採用しました。

第4章: 消費電力削減のまとめ

OCPが提案するオープン・ラック・アーキテクチャーは、48 Vバスラインを使用することで消費電力を削減し、効率を高めています。48 VバスシステムをサポートするハーフブリッジDC-DCコンバーターは、効率的な実装のためのひとつのアプローチです。

DC-DCコンバーターでは、搭載するMOSFETを慎重に選択する必要があります。そこで当社が設計した小型で高効率のDC-DCコンバーターリファレンスデザインでは、1次側にTPN1200APL、2次側にTPHR6503PLというMOSFETを採用しています。

当社では、VDSSが30 Vから250 Vまでの高品質で高効率なMOSFETをラインアップしており、さらにVDSSクラスごとにさまざまなオン抵抗タイプを用意しています。DC-DCコンバーター設計の際は、ぜひ当社MOSFETをご検討ください。

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