SiCを用いたショットキーバリアダイオード(SBD)は高い逆電圧が特長です。当社製品は、改良型JBS(Junction Barrier controlled Schottky)構造を採用し、SBDの特長である高速逆回復特性に加え、スイッチング電源用途で要求される低リーク電流(逆電流)と高サージ電流(非繰返しピーク順電流)を実現しています。
当社最新プロセスの第2世代品は、電源などのスイッチング用途に使用される際に重要な性能指数(VF・Qcj※1)を第1世代品と比べて約53 %※2に低減しました。
機器の大電力化に対応するために直流順電流12 A ~ 24 Aの6製品をラインアップに加えました。本製品は、最大97 A(TRS12E65Fの場合)の高い非繰り返しピーク順電流と、標準1.45 Vの低い順方向電圧を実現し、機器の省電力化、高効率化に貢献します。
※1 Qcj:接合容量の逆電圧0.1 V~400 Vの総電荷量
※2:TRS24N65FBとTRS24N65Dを比較。トレードオフの関係にある順方向電圧と電荷量特性の積を算出し、スイッチング用途への適性を比較する指標。この値が小さい程、性能が優れていることを表します。
SBDは、一般に逆回復時間がほとんど無い、順方向電圧が低いといった利点がありますが、その一方でリーク電流(逆電流)が大きい、サージ電流(非繰り返し順電流)が低いなどの欠点もあります。当社では改良型JBS構造を採用し、この欠点を改善しています。
SBDは、半導体と金属を接合し、その仕事関数の違いからダイオードを実現しています。この接合面では分子構造が不連続/表面の凹凸/結晶欠陥などが生じることがあります。この欠陥などの多い境界面に高い電界が印加されると、リーク電流と呼ばれる電流が流れます。
一般的な構造のショットキーバリアダイオードは図1に示すように半導体側に空乏層が広がり、電荷(または電子)による電界は金属と半導体の境界面が最も高くなります。
これに対しJBS構造のSBDでは半導体表面よりn-層の一部に埋め込まれたp層とn-層の間に空乏層が広がります。逆バイアスの電圧が高くなるとp層の空乏層同士がパンチスルーし最大電界はp層直下に移動することになります。このことにより欠陥などの多い表面の電界が下がり、リーク電流を抑えることが可能となります。
通常のSBDに順方向の電圧を印加した場合、図2のように金属ーショットキー障壁ーSi(n-)-Si(n+)と電流が流れます。この時、Si(n-)層は不純物濃度が低いことから、比較的大きな抵抗成分を持ちます。このため抵抗成分による発熱の影響が大きく、サージ電流のような順方向の大きな電流を許容する能力が制限されます。
当社では、高サージ電流を実現するために、MPS(Merged PiN Schottky)構造の概念を取り込んだ改良型JBS構造の製品を開発しました。
MPS構造は、SBDを構成するn-層の一部にP+層を埋め込んだ構造となります(当社製品ではJBS構造のp層の一部を巨大化し不純物濃度を高めた構成になっています)。このp+層と元々のSBDのn-層によるpn接合ダイオードは、高電流(高サージ電流)が必要となるタイミングでオンします。これにより電流輸送能力が高まり、大電流時の順方向電圧の上昇を抑制し高サージ電流を実現します。
改良型JBS構造の詳細は、以下をご参照願います。
品番 |
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データシート | |||||||
パッケージ |
TO-220F-2L |
TO-220-2L |
TO-247 |
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絶対最大定格 |
繰り返しピーク逆電圧 VRRM (V) |
650 |
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直流順電流 IF(DC) (A) |
12 |
24 |
20 |
16 |
12 |
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非繰り返しピーク順電流 IFSM (A) @t=10 ms |
92 |
97 |
92 |
79 |
65 |
52 |
|
接合温度 Tj (°C) |
175 |
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電気的特性 |
逆電流 IR typ. (μA) @VR=650 V |
0.6 |
0.6 |
0.5 |
0.4 |
0.3 |
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順電圧 VF typ. (V) |
1.45 @IF=12 A |
1.45 @IF=12 A |
1.45 @IF=10 A |
1.45 @IF=8 A |
1.45 @IF=6 A |
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総電荷量 Qcj typ. (nC) @VR=0.1~400 V |
30 |
30 |
24 |
19.4 |
15 |
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熱抵抗特性 |
熱抵抗 (接合·ケース間) Rth(j-C) max (°C/W) |
3.65 |
1.3 |
1.3 |
1.4 |
1.8 |
2.2 |