ヒューズの電子化が設計を変える?

高精度な遮断電流設定で設計の自由度を向上

過電流の遮断や制限に発熱を利用する従来のヒューズやポリスイッチは、周囲温度や使用状況の影響を受けやすく、動作電流を高精度に設定するのが困難なため、意図しない電流で動作してシステム動作に異常を発生させるおそれがあります。溶断を利用するヒューズの場合には部品の交換が必要になるというデメリットもあります。
一方で、電子ヒューズ (eFuse IC) はこれらの問題を解決する手段となります。eFuse ICは半導体集積を活かし、単なる遮断機能にとどまらず様々な保護機能を内蔵しています。主な特長として、短絡保護、過電圧クランプ(OVP)、過電流クランプ(OCP)、過熱保護、突入電流抑制、逆流防止などの保護機能をもつことと[注1]、IT/AV機器の安全規格IEC62368-1の部品規格に適合していることがあげられます。

[注1] OCP :Over Current Protection OVP:Over Voltage Protection

各種ヒューズの比較

 

電子ヒューズ

東芝 eFuse IC

リセッタブルヒューズ

(ポリスイッチ)

チップヒューズ

ガラス管ヒューズ

保護方法

MOSFETスイッチ

での遮断

抵抗値増大

での電流制限

導電部溶断

導電部溶断

保護速度

150ns (Typ.)

数100ms~数s

数s

数s

繰り返し使用

可能

可能

不可

不可

高精度な短絡保護の提供

高精度な短絡保護の提供

下の図はTCKE812が12Vの電源給電を行っている時に、急峻に出力電圧が理想的に短絡した場合のシミュレーション波形になります。eFuse ICの短絡検出電流値は外付け抵抗で回路的に設定しますので、従来の発熱を利用するヒューズに比べて高精度に検出電流を設定することができます。
短絡検出電流値に達した際に短絡状態(この状態をFast Trip、Short Tripとも言います)と判断して出力電流を遮断します。

高精度の過電流クランプ機能

高精度の過電流クランプ機能

過電流クランプ機能は、負荷の異常や短絡などで出力電流が増加すると、過電流クランプ制限値を超えないように出力電流をクランプ(保持)し、瞬時の電源オフを防ぐとともにデバイス自身の発熱による劣化や破壊から保護します。
過電流クランプ制限値は短絡検出電流値の62.5%となります。システムに応じて最適な設定にすることができます。ごく短い時間で出力電流が制限値を大きく超えた場合に動作する短絡保護機能と合わせて2重の過電流保護機能を持つことで堅牢な設計を実現できます。

TCKE8xxシリーズは低温から高温まで高精度でクランプすることができ、その精度は±11%です。この精度により、搭載する部品の設計/選定の自由度を向上させます。また、後段の負荷が変動した場合に、通常の過電流保護機能(サーキットブレイク)では過電流制限値に達した場合に即出力電流を停止し、出力電圧が低下します。
一方で、eFuse ICは電流をクランプし制限値以上の電流を流さないようにすることで、出力電圧を保ちつつ後段ICの耐圧以内に抑えることでより安定な電源を構成できます。

品番

TCKE800NA

TCKE800NL

TCKE805NA

TCKE805NL

TCKE812NA

TCKE812NL

データシート

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過電圧時クランプ電圧

VOVC Typ. (V)

-

6.04

15.1

復帰動作タイプ

オートリトライ

ラッチ

オートリトライ

ラッチ

オートリトライ

ラッチ

パッケージ

名称

WSON10B

サイズ 

Typ. (mm)

3.00×3.00, t=0.75 Max

動作

範囲

入力電圧

VIN (V)

4.4 ~ 18

出力電流

IOUT (A)

0 ~ 5.0

過電流リミット精度 (%)

±11 @Ta= -40 ~ 85℃、ILIM=4.38A

オン抵抗

RON Typ. (mΩ)

28

その他の保護機能や安全規格について

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