Wi-Fi®用アンテナ等におけるESD保護について

図 1 アンテナシステムへの静電気放電
図 1 アンテナシステムへの静電気放電

近年、スマートフォンやタブレット、POSなどの移動体機器が増加し、静電気が帯電している人や物から移動体機器への静電気帯電が放電(ESD)することにより、機器の劣化や損傷する可能性が増大しています。このESDには外部に露出しているコネクターなどへの接触による放電(接触放電)とアンテナ(以下ANT)や内部のループ配線などに飛び込む間接的な放電(気中放電)があります。これらESDに対して対策を行う必要があります。外部に露出している端子については、ESD試験を行い必要あれば対策を行うことは当たり前になってきています。
ANTはESDに弱い高周波ICなどに接続されています。このICは内蔵のESD保護回路を持っていますが、保護レベルは一般的にHBM 1kV以下です。このレベルは製造工程など静電気が管理された環境下では十分ですが、通常の使用環境下では十分ではなく、対策が必要です。この対策はESD保護ダイオード単体だけで考えるのではなく、高周波IC内蔵のESD保護回路なども含めたシステム全体でESDに対する対策を考える必要があります。
本FAQでは、対策用のESD保護ダイオードを選択するときの注意点について記載しています。


ANTは静電気の侵入経路として働きRF回路に劣化・破壊を与える可能性があります。特にGPSなどの受信系のフロントエンドに用いられている素子は微細加工を用いるプロセスを使用することでシステム要求を満たしています。通常より微細な加工をすればするほど、静電気に対する耐性は低くなります。
GPS用やFMラジオ用ANTなどのように受信専用のANTシステムは一般的に受信時の微小信号を扱いますが、Wi-Fi®などの送受信アンテナでは送信時の大きな電力が伝送されます。静電気に対するシステムの耐性を上げることと大電力の信号を伝送することには相反する部分があります。ここでは送受信ANTのRFラインのESD保護に対する注意点を説明します。

以下の3つ視点から説明していきます。

  1. 静電気が侵入しないときに信号が劣化しないこと
  2. 静電気が侵入したときに被保護素子が劣化・破壊しないこと
  3. 基板設計時の注意点

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