ボルテージフォロアーは発振しやすいと聞きました なぜですか?

オペアンプ増幅回路は負帰還で使用されますが、オペアンプには変曲点(ポール)があり、このポールによる位相遅れで帯域内で正帰還になってしまうことがあります。ボルテージフォロアーは全帰還であり帯域は遮断周波数までと最も広いため発振しやすいと言えます。ボルテージフォロアーで使用する場合はユニティーゲインで使用可能な製品を選択する必要があります。

図-1 帰還による発振
図-1 帰還による発振

オペアンプを用いた増幅回路では、一般的に帰還回路を構成して使用されます。帰還回路はある条件を満たすと発振します。これは発振条件と言われるもので、ゲイン条件と位相条件があります。単純に説明すると発振は図のように、入力された信号やノイズが帰還され徐々に成長することによって生じます。成長つまり、入力の加算器の出力が入力より大きくなることです。(図-1)
これを式で表すと下記となります。
           β x A ≧ 1
           ∠ β x A         ≧ 360°
つまり、元の信号より大きな信号が帰ってきて、同位相で加算される = 発振する ことを示しています。

オペアンプ単体の周波数特性を図に示します。
オペアンプのゲインカーブは変曲点(ポール)を持ちます。1つ目のポール周波数から -20 dB/dec の傾きで下がります。ポールが2つあれば、2つ目のポール周波数から -40 dB/dec の傾きで下がることになります。また位相はこのポール周波数の1/10から -45 /dec の傾きで位相が遅れ1つのポールで 90° 位相が遅れます。2つあればトータルで 180° 位相遅れが生じます。
ユニティーゲインで使用可能とされていない一般的なオペアンプでは、遮断周波数(ゼロクロス周波数)fTまでの帯域内にゲインの変曲点(ポール)が2つあります。これに対し、ユニティーゲインで使用可能なオペアンプでは、帯域内で位相遅れを生じる変曲点は、通常1stポールしかありません。したがって、位相遅れは90°しか生じません。

図-2 ユニティーゲインで使用できないオペアンプの周波数特性
図-2 ユニティーゲインで使用できないオペアンプの周波数特性
図-3 ユニティーゲインで使用可能なオペアンプの周波数特性
図-3 ユニティーゲインで使用可能なオペアンプの周波数特性
図-4 一般的なオペアンプ増幅回路
図-4 一般的なオペアンプ増幅回路

オペアンプを利用した増幅回路は大きく分けて反転増幅回路と非反転増幅回路の2つです。ボルテージフォロアーは非反転増幅器の1種です。非反転増幅器のゲインを0 dB(R1=0、R2=∞)としたものがボルテージフォロアーとなります。
非反転増幅回路はプラス端子に入力し、出力からの帰還はマイナス端子に入力します。オペアンプのプラス側に入力するので、位相は0°から始まります。(オペアンプ単体の周波数特性と同じです。)反転増幅回路では+180°から位相進みが減少する形となります。

ボルテージフォロアーは帰還率が100%の全帰還の非反転増幅回路です。ゲインが0 dBでしゃ断周波数fTの帯域を持ちます。出力をマイナスの端子に帰還して負帰還を構成しているので、帯域内で位相が180°遅れるとその周波数で正帰還となり発振することになります。
ユニティーゲインを保証していないオペアンプと保証しているオペアンプでボルテージフォロアーでの位相は以下のようになります。
位相遅れはしゃ断周波数で最も遅れ、たとえば下図(図-5)では-180°近くなり、位相余裕はほとんどなくなります。(製品によってはゼロになるものもあります。)これに対し、ユニティーゲインの保証のあるものでは90°の位相余裕があります。(図-6)
ただし、これは容量負荷の無い場合の状態です。実際にはオペアンプの出力容量・配線の浮遊容量・負荷側の容量がありますので、さらに位相遅れが生じることがあります。したがって、ユニティーゲインの保証のない製品では発振が起こる可能性が高いと言えます。

ただし、ユニティーゲインを保証している製品でも負荷容量が大きい場合、負荷容量と出力インピーダンスで構成されるLPFのカットオフ周波数がしゃ断周波数fTの内側や近傍にある場合には発振することがあります。

図-5 ユニティーゲインできないオペアンプの周波数特性(ボルテージフォロアー)
図-5 ユニティーゲインできないオペアンプの周波数特性(ボルテージフォロアー)
図-6 ユニティーゲインで使用可能なオペアンプの周波数特性(ボルテージフォロアー)
図-6 ユニティーゲインで使用可能なオペアンプの周波数特性(ボルテージフォロアー)

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