オンラインシミュレーターによるPFC回路設計

~Interleaved PFC回路の構成と設計検討ポイント~

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はじめに

AC-DC電源では、入力電流の歪みにより、配線や部品の発熱や、電源ラインへの高調波流入が発生します。これらの「系統側への影響」は、後段 (DC-DC) を最適化しても改善が難しく、一次側 (入力側) の設計段階で方向性を決める必要があります。
また、高調波電流は国際規格*1で制限されており、機器が系統へ流す電流の上限が定められています。
これに対応するのがPFC (Power Factor Correction) です。PFC回路は、効率向上だけでなく規格適合の観点からも、設計初期に検討すべき重要な要素です。

*1: IEC 61000-3-2 (16A/相以下)、IEC 61000-3-12 (16A超~75A/相以下) など

PFCとは何を改善する回路なのか

一般的な整流・平滑回路 (ブリッジ整流+平滑コンデンサ) のみの場合、入力電流は交流電圧のピーク付近に集中して流れます。その結果、電流波形はきれいな正弦波ではなくなります。
このため、同じ出力電力であっても入力電流の実効値が増加し、配線や部品の発熱、さらに電源系統への高調波電流の流入といった課題が生じます。
PFC回路は、入力電圧に同期して電流を制御することで、入力電流を正弦波に近づけるとともに電圧との位相差を抑えます。これにより、力率の改善と高調波電流の低減を実現します。

スイッチング方式PFCの基本的な考え方

現在のPFC回路では、MOSFETを用いたスイッチング方式が一般的です。インダクターとスイッチング素子を用い、入力電圧の変化に応じて電流を制御します。スイッチング方式PFCでは、インダクター電流をどの状態でスイッチングするか、電流リップルやピーク電流がどのように変化するか、といった点が設計上の重要ポイントになります。

PFCの種類 (方式の違い)

PFC回路は、構成の違いとして複数の方式があり、用途・電力帯・効率要求に応じて選択します。オンラインシミュレーターでは、AC-DC電源の一次側 (PFC段) として以下の方式が用意されています。

  • Single PFC: 単相昇圧型PFC (基本となる構成)
  • Interleaved PFC: 2相構成のPFC (電流分担・リップル低減が特徴)
  • Totem-Pole PFC: MOSFETで整流とPFC動作を行う構成
  • Semi-Bridgeless PFC: 一部にダイオードを残したブリッジレス構成
  方式 特徴 主な用途・位置づけ
受動方式 パッシブPFC リアクトルで電流変化を抑制/構成が簡単/大型化 低出力・簡易電源
アクティブ方式 Single PFC 昇圧型の基本構成/回路が最もシンプル 小~中電力電源の基本
Interleaved PFC 2相構成で電流を分担/リップル低減/熱分散 中~大電力電源 (今回の例)
Totem-pole PFC MOSFETで整流とPFCを兼用/高効率 高効率電源 (サーバ・車載など)
Semi-bridgeless PFC ブリッジ損失を一部低減/構成は中間 高効率志向の民生・産業
Bridgeless PFC ブリッジダイオードを排除し損失低減 高効率・高電力用途

通電モード (CCM/CRM/DCM) という見方

PFC回路では、電流の「流し方」にも選択肢があります。代表例として、CCM (連続電流モード) では電流を連続的に流し、入力電流の整形を行います。波形上の違い (リップル、ピーク、歪み) は設計判断に直結するため、方式だけでなく通電モードの観点でも波形を確認することが重要です。

モード 特徴 設計への影響
CCM (連続電流モード) 電流が途切れない/リップル小 大電力向け、損失設計が重要
CRM (臨界モード) ゼロ電流点でスイッチ 損失と効率のバランス
DCM (不連続モード) 電流が毎回ゼロになる 小電力向け、ピーク大

シミュレーションで確認できる内容

オンラインシミュレーターでは、入力電流波形、回路方式ごとの電流リップルやピーク電流の違い、MOSFETや回路定数変更時の動作波形などをWeb上で確認できます。
また、シミュレーターは条件設定後に波形を表示し、比較しながら検討を進められる点が特長で、設計初期の事前検証に有効です。

シミュレーションの実施には、ログインが必要となります。

本記事で扱う使用例

本記事では、PFC回路の一例としてInterleaved PFCを取り上げます。
Interleaved PFCは、昇圧PFC回路を2相 (または多相) に分割し、各相を180°位相をずらして動作させる方式です。各相で電流を分担することで、素子ストレスや発熱を分散できます。
また、2相のインダクター電流が重なり合うことでリップル電流が部分的に打ち消し合い、全体のリップルが低減されます。さらに、等価的にリップル周波数が高くなるため、入力・出力フィルタ設計 (リップル電流やEMI) にも有利に働きます。
このように、波形からその効果を直感的に把握しやすいため、オンラインシミュレーターを用いた波形確認による理解や事前検証の題材として適しています。

シミュレーションの実施には、ログインが必要となります。

オンラインシミュレーターによる検証例 (Interleaved PFC)

1. シミュレーション条件

今回のシミュレーションでは、図1に示す通り、以下の条件を設定し、推奨MOSFETの先頭として提示されたTK125U60Z1を使用して検証します。

  • 入力: Vin = 230V、Fin = 50Hz
  • 出力: Vout = 380V、Pout = 800W
  • スイッチング周波数: 65kHz
  • 使用MOSFET: TK125U60Z1
これはInterleaved PFCのシミュレーション条件と回路構成の画像です。

図1: Interleaved PFCのシミュレーション条件と回路構成

2. シミュレーション結果

図2に出力電圧・電流、図3に入力電圧・電流、図4にインダクター電流波形を示します。
まず、図2の出力電圧波形から、出力電圧は目標値である380V付近に制御され、安定していることが確認できます。

これはInterleaved PFCの出力電圧および出力電流波形の画像です。

図2: Interleaved PFCの出力電圧および出力電流波形

次に、図3の入力電流波形を見ると、電流は入力電圧に追従した正弦波状となっており、PFC回路により電流波形が補正されていることが分かります。これにより、力率改善の動作が実現されていることが確認できます。

これはInterleaved PFCの入力電圧および入力電流波形の画像です。

図3: Interleaved PFCの入力電圧および入力電流波形

さらに、図4のインダクター電流波形では、インダクターL1とL2の電流が互いに位相をずらして動作しており、180°の位相差を持つインターリーブ動作が確認できます。このことから、2相構成により電流が分担されていることが分かります。

これはInterleaved PFCのインダクター電流波形と180°位相差のインターリーブ動作の画像です。

図4: Interleaved PFCのインダクター電流波形と180°位相差のインターリーブ動作

3. Accurateモードによる効率および損失評価

オンラインシミュレーターのAccurateモードを用いることで、波形だけでなく効率や素子損失も確認できます。
今回のシミュレーションでは、図5に示す通り、以下の結果が得られています。

  • 効率: 92.2%
  • 損失
    o Q1: 1.29W
    o Q2: 1.29W

この結果から、

  • 2相構成により各MOSFETの損失が分散されている
  • Q1とQ2の損失が一致しており、各相が均等に電流を分担している
  • 約92%の効率で動作しており、設定条件に対して妥当な結果となっている

ことが確認できます。

これはAccurateモードによる効率および損失評価結果の画像です。

図5: Accurateモードによる効率および損失評価結果

使用MOSFET (TK125U60Z1) の仕様とポイント

本検証で使用したTK125U60Z1の主な仕様は以下の通りです。

  • NチャネルパワーMOSFET (DTMOSⅥ世代)、パッケージ: TOLL
  • ドレイン・ソース間電圧 VDSS = 600V
  • ドレイン電流 (DC) ID = 20A
  • ドレイン・ソース間オン抵抗 RDS(ON) = 125mΩ (最大)
  • ゲート入力電荷量 Qg = 28nC (標準)
  • 入力容量 Ciss = 1620pF (標準)
  • 参考 (ボディダイオード特性) : 逆回復時間 trr = 285ns (標準)、逆回復電荷量 Qrr = 3100nC (標準)

    製品情報 (参照) : TK125U60Z1

まとめ

PFC回路は、入力電流を正弦波に近づけて高調波電流を抑制し、力率の改善を図る回路です。方式 (Single/Interleaved/Totem-Pole/Semi-Bridgeless) や通電モード (CCM/CRM/DCM) の選択により、電流波形、リップル、素子ストレス、損失・効率、設計難度が変わります。
オンラインシミュレーターを活用することで、環境構築や素子モデルの準備を行うことなく、方式やMOSFET、回路定数を切り替えながら波形を比較できます。さらに、Accurateモードを使用することで、効率や素子損失 (例: Q1/Q2) を含めた評価が可能となり、設計初期の当たり付けを短時間で行えます。
本記事で示したInterleaved PFCの例では、 (1) 180°位相差による電流分担、 (2) リップル低減効果、 (3) 入力電流の整形と出力電圧制御、 (4) 効率および損失の評価を、一連の流れで確認できることを示しています。

Interleaved PFC を試す

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関連コンテンツ

アプリケーションノート: PFC回路 (PDF: 1.38MB)

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