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AC-DC電源では、整流・平滑によって入力電流が電圧のピーク付近に集中し、電流波形の歪みや高調波電流が発生しやすくなります。高調波電流は、配線や部品の発熱、電源系統への影響につながるため、後段のDC-DC回路だけでなく、一次側 (入力側) の設計段階から対策を検討することが重要です。
PFC (Power Factor Correction: 力率改善) 回路は、入力電圧に同期して入力電流を制御し、電流波形を正弦波に近づけることで、力率改善と高調波電流の低減を図る回路です。IEC 61000-3-2では、公共の低圧配電系統に接続される定格入力電流16A/相以下の電気・電子機器について、高調波電流成分の制限が規定されています。こうした背景から、PFC回路は効率向上だけでなく、規格適合や電源品質の観点でも設計初期に確認すべき重要な要素です。
*1: IEC 61000-3-2 (定格入力電流16A/相以下)、IEC 61000-3-12 (16A超~75A/相以下) など。
AC-DC電源では、入力電流の歪みにより、配線や部品の発熱や、電源ラインへの高調波流入が発生します。これらの「系統側への影響」は、後段 (DC-DC) を最適化しても改善が難しく、一次側 (入力側) の設計段階で方向性を決める必要があります。
また、高調波電流は国際規格*1で制限されており、機器が系統へ流す電流の上限が定められています。
これに対応するのがPFC (Power Factor Correction) です。PFC回路は、効率向上だけでなく規格適合の観点からも、設計初期に検討すべき重要な要素です。
*1: IEC 61000-3-2 (16A/相以下)、IEC 61000-3-12 (16A超~75A/相以下) など
一般的な整流・平滑回路 (ブリッジ整流+平滑コンデンサー) のみの場合、入力電流は交流電圧が平滑コンデンサー電圧を上回るタイミングに集中して流れます。そのため、入力電流はパルス状となり、正弦波から大きくずれます。電流波形が歪むと、同じ出力電力でも入力電流の実効値が増加し、配線・部品の発熱や高調波電流の増加につながります。PFC回路は、インダクターとスイッチング素子を用いて入力電流を制御し、入力電圧と同相の正弦波に近づけます。これにより、力率を1に近づけるとともに、高調波電流を低減します。
一般的な整流・平滑回路 (ブリッジ整流+平滑コンデンサ) のみの場合、入力電流は交流電圧のピーク付近に集中して流れます。その結果、電流波形はきれいな正弦波ではなくなります。
このため、同じ出力電力であっても入力電流の実効値が増加し、配線や部品の発熱、さらに電源系統への高調波電流の流入といった課題が生じます。
PFC回路は、入力電圧に同期して電流を制御することで、入力電流を正弦波に近づけるとともに電圧との位相差を抑えます。これにより、力率の改善と高調波電流の低減を実現します。
現在のPFC回路では、MOSFETを用いたアクティブ (スイッチング) 方式が広く使われています。代表的な昇圧型PFCでは、インダクター、MOSFET、ダイオードを組み合わせ、入力電圧の瞬時値に応じてインダクター電流を制御します。設計では、インダクター電流を連続的に流すか、ゼロ電流点でスイッチングするかといった通電モード、電流リップル、ピーク電流、スイッチング損失、EMIフィルターへの影響などを確認する必要があります。オンラインシミュレーターは、これらの波形変化を画面上で把握し、MOSFETや回路定数の違いを比較するための事前検証に有効です。
現在のPFC回路では、MOSFETを用いたスイッチング方式が一般的です。インダクターとスイッチング素子を用い、入力電圧の変化に応じて電流を制御します。スイッチング方式PFCでは、インダクター電流をどの状態でスイッチングするか、電流リップルやピーク電流がどのように変化するか、といった点が設計上の重要ポイントになります。
PFC回路には、構成や制御方式の違いにより複数のトポロジーがあります。用途、出力電力、効率要求、部品点数、設計難度などに応じて選択します。オンラインシミュレーターでは、AC-DC電源の一次側 (PFC段) として、次のような方式を選択して動作を確認できます。
| 方式 | 特徴 | 主な用途・位置づけ | |
|---|---|---|---|
| 受動方式 | パッシブPFC | リアクトルで電流変化を抑制/構成が簡単/大型化 | 低出力・簡易電源 |
| アクティブ方式 | Single PFC | 昇圧型の基本構成/回路が最もシンプル | 小~中電力電源の基本 |
| Interleaved PFC | 2相構成で電流を分担/リップル低減/熱分散 | 中~大電力電源 (今回の例) | |
| Totem-pole PFC | MOSFETで整流とPFCを兼用/高効率 | 高効率電源 (サーバ・車載など) | |
| Semi-bridgeless PFC | ブリッジ損失を一部低減/構成は中間 | 高効率志向の民生・産業 | |
| Bridgeless PFC | ブリッジダイオードを排除し損失低減 | 高効率・高電力用途 |
PFC回路は、構成の違いとして複数の方式があり、用途・電力帯・効率要求に応じて選択します。オンラインシミュレーターでは、AC-DC電源の一次側 (PFC段) として以下の方式が用意されています。
| 方式 | 特徴 | 主な用途・位置づけ | |
|---|---|---|---|
| 受動方式 | パッシブPFC | リアクトルで電流変化を抑制/構成が簡単/大型化 | 低出力・簡易電源 |
| アクティブ方式 | Single PFC | 昇圧型の基本構成/回路が最もシンプル | 小~中電力電源の基本 |
| Interleaved PFC | 2相構成で電流を分担/リップル低減/熱分散 | 中~大電力電源 (今回の例) | |
| Totem-pole PFC | MOSFETで整流とPFCを兼用/高効率 | 高効率電源 (サーバ・車載など) | |
| Semi-bridgeless PFC | ブリッジ損失を一部低減/構成は中間 | 高効率志向の民生・産業 | |
| Bridgeless PFC | ブリッジダイオードを排除し損失低減 | 高効率・高電力用途 |
PFC回路では、トポロジーだけでなく、インダクター電流の流れ方 (通電モード) も重要です。代表的なモードには、CCM (Continuous Conduction Mode: 連続電流モード)、CRM/BCM (Critical/Boundary Conduction Mode: 臨界電流モード)、DCM (Discontinuous Conduction Mode: 不連続電流モード) があります。
CCMはインダクター電流が途切れず、リップルを比較的小さく抑えやすいため中~大電力用途で使われます。一方、CRM/BCMはゼロ電流点でスイッチングするため、スイッチング損失やダイオード逆回復の面で利点がありますが、電流ピークや制御の考慮が必要です。DCMは小電力用途で扱いやすい一方、ピーク電流が大きくなりやすい点に注意が必要です。波形上のリップル、ピーク、歪みは設計判断に直結するため、方式と通電モードの両面から確認することが重要です。
| モード | 特徴 | 設計への影響 |
|---|---|---|
| CCM (連続電流モード) | 電流が途切れない/リップル小 | 大電力向け、損失設計が重要 |
| CRM (臨界モード) | ゼロ電流点でスイッチ | 損失と効率のバランス |
| DCM (不連続モード) | 電流が毎回ゼロになる | 小電力向け、ピーク大 |
PFC回路では、電流の「流し方」にも選択肢があります。代表例として、CCM (連続電流モード) では電流を連続的に流し、入力電流の整形を行います。波形上の違い (リップル、ピーク、歪み) は設計判断に直結するため、方式だけでなく通電モードの観点でも波形を確認することが重要です。
| モード | 特徴 | 設計への影響 |
|---|---|---|
| CCM (連続電流モード) | 電流が途切れない/リップル小 | 大電力向け、損失設計が重要 |
| CRM (臨界モード) | ゼロ電流点でスイッチ | 損失と効率のバランス |
| DCM (不連続モード) | 電流が毎回ゼロになる | 小電力向け、ピーク大 |
オンラインシミュレーターでは、入力電圧・入力電流、出力電圧・出力電流、インダクター電流などの波形を表示し、回路方式やMOSFET、回路定数を変更したときの影響を比較できます。
設計初期には、実機評価の前に「入力電流が電圧に追従しているか」「インダクター電流のピークやリップルが許容範囲にあるか」「出力電圧が目標値付近で安定しているか」といった観点を確認できます。また、Accurateモードを使用すると、波形だけでなく効率や素子損失も確認でき、部品選定や回路定数見直しの当たり付けに活用できます。
オンラインシミュレーターでは、入力電流波形、回路方式ごとの電流リップルやピーク電流の違い、MOSFETや回路定数変更時の動作波形などをWeb上で確認できます。
また、シミュレーターは条件設定後に波形を表示し、比較しながら検討を進められる点が特長で、設計初期の事前検証に有効です。
シミュレーションの実施には、ログインが必要となります。
本記事では、PFC回路の一例としてInterleaved PFCを取り上げます。Interleaved PFCは、昇圧PFC回路を2相 (または多相) に分割し、各相を位相差付きで動作させる方式です。2相構成では一般に180°位相をずらして駆動し、各相で電流を分担します。
各相のインダクター電流リップルは互いに重なり合い、入力側でリップル成分が部分的に相殺されます。これにより、入力電流リップルや出力コンデンサーのリップル電流を低減しやすくなり、EMIフィルターや熱設計の面でもメリットが期待できます。ROHM Tech WebやNXPの技術資料でも、Interleaved PFCはリップル低減、電流分担、フィルター小型化、効率改善に有効な方式として説明されています。
このように、Interleaved PFCは波形上で効果を確認しやすく、オンラインシミュレーターによる理解・事前検証の題材として適しています。
本記事では、PFC回路の一例としてInterleaved PFCを取り上げます。
Interleaved PFCは、昇圧PFC回路を2相 (または多相) に分割し、各相を180°位相をずらして動作させる方式です。各相で電流を分担することで、素子ストレスや発熱を分散できます。
また、2相のインダクター電流が重なり合うことでリップル電流が部分的に打ち消し合い、全体のリップルが低減されます。さらに、等価的にリップル周波数が高くなるため、入力・出力フィルタ設計 (リップル電流やEMI) にも有利に働きます。
このように、波形からその効果を直感的に把握しやすいため、オンラインシミュレーターを用いた波形確認による理解や事前検証の題材として適しています。
シミュレーションの実施には、ログインが必要となります。
今回のシミュレーションでは、図1に示す通り、以下の条件を設定し、推奨MOSFETの先頭として提示されたTK125U60Z1を使用して検証します。
図1: Interleaved PFCのシミュレーション条件と回路構成
図2に出力電圧・電流、図3に入力電圧・電流、図4にインダクター電流波形を示します。
まず、図2の出力電圧波形から、出力電圧は目標値である380V付近に制御され、安定していることが確認できます。
図2: Interleaved PFCの出力電圧および出力電流波形
次に、図3の入力電流波形を見ると、電流は入力電圧に追従した正弦波状となっており、PFC回路により電流波形が補正されていることが分かります。これにより、力率改善の動作が実現されていることが確認できます。
図3: Interleaved PFCの入力電圧および入力電流波形
さらに、図4のインダクター電流波形では、インダクターL1とL2の電流が互いに位相をずらして動作しており、180°の位相差を持つインターリーブ動作が確認できます。このことから、2相構成により電流が分担されていることが分かります。
図4: Interleaved PFCのインダクター電流波形と180°位相差のインターリーブ動作
オンラインシミュレーターのAccurateモードを用いることで、波形だけでなく効率や素子損失も確認できます。
今回のシミュレーションでは、図5に示す通り、以下の結果が得られています。
この結果から、
ことが確認できます。
図5: Accurateモードによる効率および損失評価結果
本検証で使用したTK125U60Z1の主な仕様は以下の通りです。
本検証で使用したTK125U60Z1の主な仕様は以下の通りです。
PFC回路は、入力電流を入力電圧に同期した正弦波に近づけることで、高調波電流を低減し、力率を改善する回路です。方式 (Single/Interleaved/Totem-Pole/Semi-Bridgeless) や通電モード (CCM/CRM/DCM) によって、電流リップル、ピーク電流、素子ストレス、損失・効率、設計難度が変わります。
オンラインシミュレーターを活用すると、環境構築や素子モデルの準備を行わずに、方式、MOSFET、回路定数を切り替えながら波形を比較できます。さらにAccurateモードでは、効率や素子損失も確認できるため、設計初期の当たり付けや部品選定の検討を効率化できます。
本記事で示したInterleaved PFCの例では、 (1) 180°位相差による電流分担、 (2) リップル低減効果、 (3) 入力電流の整形と出力電圧制御、 (4) 効率および損失評価を、一連の流れで確認できることを示しました。PFC回路の動作を波形と数値の両面から確認できる点が、オンラインシミュレーターの大きな利点です。
Interleaved PFC を試す
PFC回路は、入力電流を正弦波に近づけて高調波電流を抑制し、力率の改善を図る回路です。方式 (Single/Interleaved/Totem-Pole/Semi-Bridgeless) や通電モード (CCM/CRM/DCM) の選択により、電流波形、リップル、素子ストレス、損失・効率、設計難度が変わります。
オンラインシミュレーターを活用することで、環境構築や素子モデルの準備を行うことなく、方式やMOSFET、回路定数を切り替えながら波形を比較できます。さらに、Accurateモードを使用することで、効率や素子損失 (例: Q1/Q2) を含めた評価が可能となり、設計初期の当たり付けを短時間で行えます。
本記事で示したInterleaved PFCの例では、 (1) 180°位相差による電流分担、 (2) リップル低減効果、 (3) 入力電流の整形と出力電圧制御、 (4) 効率および損失の評価を、一連の流れで確認できることを示しています。
Interleaved PFC を試す
シミュレーションの実施には、ログインが必要となります。
アプリケーションノート: PFC回路 (PDF: 1.38MB)