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当社は、車載用ICにおいてEMI・EMS特性を回路設計段階で高精度に予測可能なモデルベース開発 (MBD) 技術を確立しました。これにより、従来は開発後期で判明していたEMC課題を設計初期で解決でき、再設計リスクの大幅低減に貢献します。
自動車の開発は大きな転換期を迎えています。ゾーニングによるECU集中化に伴い、EMIによる他ECUへの誤動作や、EMS によるIC回路内部の誤動作のリスクが高まります。しかし自動運転時の安全を確保するためには、車載通信用ICなど半導体製品のEMC耐量が必要で、EMI/EMSによる誤動作に対する、半導体製品のロバスト性が従来以上に求められています。それと同時に開発期間短縮に対するニーズも高まっており、シミュレーションによる各種検証が不可欠となっています。
このような背景のもと、当社は車載半導体製品の高精度モデル開発・提供、およびMBDでの検証の高度化に注力しております。検証内容は電気回路だけでなく、アクチュエーター等のメカモデルも活用した電気・機械 (エレメカ) 連成解析、過渡熱解析、EMI/EMS解析も可能です。
EMIやEMSに関しては、車載通信用IC (TB9032FNG) を用いて高精度モデル開発を進めました。ICの開発段階においては、EMI対策のためにドライバー出力波形をなまらせると通信規格 (ISO 20794) のAC特性を満たすことが困難になるという二律背反の課題が生じますが、高精度なシミュレーションによって最適化を図りました。具体的には、EMI対策としてBUS波形の立ち上がり・立ち下がり傾斜制御 (スルーレート制御) と丸め制御 (図1①~③) を実施しました。BUS波形が急峻に変化するカドの部分を丸めることにより、EMI特性 (150Ω法) で5~15dBuVの改善効果が得られます。また、②の丸め制御部分ではBUSがONしてドミナント (Low) 状態に移行する時のアンダーシュート (グランドバウンス) によるスイッチングノイズも抑制効果があります。これらの対策のEMI 特性への影響については、回路設計段階でシミュレーションが可能で、図2に示すように、BUS波形制御によりノイズスペクトラムを低減できていることが分かります。
このような検証を経て開発したTB9032FNGの実サンプルを用いてEMI (150Ω法) の実測評価も行っています。実測結果とシミュレーション結果を比較したグラフが図3です。実測結果との一致が示されており、本モデルの予測精度の高さを確認できました。シミュレーションによりEMI低減効果を定量的に予測できるため、設計段階でノイズ対策の最適化が可能となります。
EMSにおいても、回路設計段階でのシミュレーションが有効です。半導体単体の評価で一般的なDPI (Direct Radio Frequency Power Injection) 法などのノイズを外部から印加すると、そのノイズが原因となってIC内部では半導体素子および回路が誤動作を引き起こす可能性があります。これを防ぐためには、回路設計段階でICの耐性を検証しておくことが重要になります。回路検証の進め方としては、寄生トランジスタの感度や素子間の距離関係を含めて解析を実施し、最終的にシミュレーションで問題ないことを確認する手法があります。DPI法も図4のように、サンプルの実測結果とシミュレーション結果の相関を確認できています。
このようにして開発したTB9032FNGの事例によって、EMI、EMSのいずれもモデルベースでのシミュレーション結果と実測結果との高い相関性を確認することができました。この高精度ICモデルを用いることにより、周辺の受動部品やプリント基板も含めたシミュレーションを実現できます。従来の車載システム開発においては、最終部品が揃う開発後期にEMC評価を実施し、問題が露見して再設計となるケースが散見されました。そのリスクを大幅に低減し、開発期間を短縮することが可能となります。
当社は今後も業界のニーズに即した半導体製品モデルの開発・提供を通じて、車載システムの高信頼化と開発期間短縮の両立に貢献し、次世代アーキテクチャーに適した半導体ソリューションを提供していきます。
* 社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。