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オペアンプのノイズに関して説明してきました。既に記載したようにオペアンプの内部ノイズは入力換算雑音電圧として定義されます。図 3-12に単純化した等価回路を示します。三角で示されるオペアンプは理想オペアンプで、入力換算ノイズ電圧VNIはVIN(+)とVIN(-)の差電圧として表記していますので、VIN(+)に直列に挿入しても、VIN(-)に直列に挿入しても意味合いは変わりません。
このモデルを使用して非反転アンプ・反転アンプについて考えます。
図 3-13に反転増幅回路、図 3-14に非反転増幅回路を示します。それぞれ理想オペアンプのVin(-)端子に直列に入力換算ノイズ源VNIを直列に挿入しています。なお各回路の信号利得は2-4・2-5項で示したAVとなります。
重ね合わせの理から、信号源とノイズ源を分けて考えることができます。ノイズ源に対して利得計算を行います。このときViは重ね合わせの理から短絡で考えます。
図 3-13において、VIN(+)端子がGNDですので、VIN(-)端子もGNDと考えることができます。従って抵抗R1とR2の間の電位はVNIになります。
R1を流れる電流 I1はオペアンプには流れないので、全てR2に流れます。
I1 = VNI / R1
従って、VOのノイズ電圧 VNOは
VNO = VNI + R2 × VNI / R1 = VNI × (1 + R2 / R1)
ノイズゲイン ANは VNO / VNI になるので下記となります。
AN = 1 + R2 / R1
このように、オペアンプで生じるノイズのゲインが信号ゲインと異なる場合があります。
このゲインをノイズゲインと呼びます。
このノイズゲインの考え方は以下に応用ができます。
このようにオペアンプを利用した回路ではノイズゲインの考え方が重要です。
ここで発振余裕に対して、少し説明をします。
振器以外の発振は、意図しない周波数で不要な信号が生じてしまうことを意味します。2-3項 発振で説明したように発振は種となるノイズなどの不要信号が帰還ループを巡回することで成長し発振となります。
ここで言う発振の種はランダムなノイズであると考えます。この種は、オペアンプのVIN(+)端子とVIN(-)端子の電位差として入力されます。つまり、図 3-12で考えた入力換算ノイズ電圧VNIに他なりません。
発振の安定性を判断するためには、ノイズゲインで判断することが重要です。既に説明していますが、一般的な反転増幅器と非反転増幅器ではノイズゲインは非反転増幅器の信号ゲインと同じ式になります。
このノイズゲインの考え方を応用して、発振余裕を持たせる(ノイズゲインを高くする)ことも可能です。
反転増幅器で信号ゲインを変えずに発振余裕を増やす例を図 3-16に示します。
重ね合わせの理を用いて、ViとVNIを分けて考えます。
(Viを考えるときはVNIを短絡、VNIを考えるときはViを短絡で考えます)
仮想短絡の考え方から、VIN(-)端子の電圧はVIN(+)端子と同じでGNDです。
従って、シグナルゲイン AV ( = Vo / Vi ) ではR3の両端の電圧は同じGNDになりますので、R3に電流は流れません。
従って、AV = - R2 / R1 となり、基本的な反転増幅器と同じ式になります。
ノイズゲイン AN ( = Vo / VNI ) では、Viが短絡なので、R1 // R3 となります。従って、AN = 1 + R2 / ( R1 // R3 ) となり、基本的な反転増幅器におけるノイズゲインの式 AN = 1 + R2 / R1 に対し、高いゲインを示します。このことは発振余裕を高く取れることと等価になります。
ただし、このノイズゲインの考え方は入力オフセット電圧の考え方と全く同じですので、発振余裕は増えますが入力オフセット電圧が高くなるという欠点があります。