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物質に電気が流れる場合、物質内に存在する自由電子が関与します。これら自由電子は原子が持つ電子ですが、原子との結束が緩く自由に動き回れる電子です。
古典的な物理学に陽子と中性子による原子核の周りを複数の軌道を持った電子がまわっているボーアモデルがあります。物質ごとに固有の電子を持ち、これら電子は原子核に近い軌道から埋まっていきます。例えばシリコン (Si) の場合、14個の電子を持ちます。半導体であるSiのモデルを図に示します。
電子は波の性質を持っているため、波長の整数倍の軌道長を持つ軌道半径でしか安定しません。このためボーアモデルで示すような離散した軌道を持ちます。
単一原子の場合、この軌道は非常に狭いエネルギー幅です。しかし、電子は同一の軌道を持つことができないとされています(パウリの排他律)。このため、単一原子⇒分子⇒結晶 と複数の原子が近接した構造を持つようになると、帯のようなエネルギー状態となります。
電子は原子核に近い軌道ほど原子核と強い結束力を持っています。最も弱い結束力を持つ最外殻の電子を価電子、この最外殻軌道を価電子帯、その外側の軌道を伝導帯と呼びます。既に記載しましたが、電子は波の性質があり価電子帯と伝導帯の間には禁制帯と呼ばれる電子が安定して存在できない帯があります。
電子は価電子帯にある時は原子核からの拘束を受け自由に動くことはできません。電子が自由に動くためには、外部から電子が熱や光などのエネルギーを得て価電子帯から少なくとも伝導帯に移る必要があります。(例えば m殻 ⇒ n殻)このとき必要な最小のエネルギーがバンドギャップとなります。
絶縁体・半導体・金属のエネルギーバンド図は以下のようになります。
絶縁体・半導体は電子が充填している最外殻軌道が価電子帯、電子の存在しない軌道を伝導帯と呼んでいます。ただし金属の場合、最外殻の電子軌道である伝導帯は、電子が全ての軌道を充填していません。このように、空軌道も存在することから電子は自由電子として動くことができます。
価電子帯と伝導帯の間は禁制帯と呼ばれます。この区間は電子が安定して存在できません。また、このエネルギー幅をバンドギャップと呼びます。絶縁体に比較して半導体は禁制帯が狭く(バンドギャップが低く)なっています。
絶縁体と半導体の場合、伝導帯と価電子帯の中間にフェルミ準位(フェルミレベル)があります。金属の場合、伝導に寄与する電子のエネルギー準位が存在するバンドの中にフェルミ準位があります。フェルミ準位は電子が軌道を占有する確率が1/2になるエネルギーレベルと定義されますが、実際には絶縁体・半導体では禁制帯にあり電子は存在しません。
不純物を含まない真性半導体にリン P やホウ素 B などの不純物を添加したn型半導体・p型半導体の場合を説明します。
n型半導体:
Siは結合の手が4本ある4価の物質です。不純物の無い真性半導体のSi結晶に5価の物質(リン P、ヒ素 As、アンチモン Sbなど)を不純物として添加します。結合に不要な価電子1個はわずかなエネルギーで原子から放出され自由電子として振舞います。電子が過剰になるので、常温ではフェルミ準位は伝導帯に近づきます。
P型半導体:
Siに3価の物質(ホウ素 B、インジウム In、ガリウム Gaなど)を不純物として添加します。Siとの結合に不足している電子が1個は、他のSi原子から電子を奪い取ります。この不足した結合は正孔(ホール)と呼ばれ自由電子と同じように結晶内を動き回ります。正孔が過剰になるので、常温ではフェルミ準位は価電子帯に近づきます。