ダイオードの技術資料には、どのような電気的特性項目が記載されていますか?

ダイオードのデータシートで規定している主な電気的特性は、順電圧、逆電流、端子間容量、逆回復時間などになります。

ダイオードのデータシートで規定している電気的特性を項目別に説明します。電気的特性項目は製品によって異なります。また特に断りのない場合、Ta = 25℃での規格値となります。

ダイオード(1SS181)の技術資料の電気的特性項目の一例を以下に示します

項目 記号 測定条件 最小 標準 最大 単位
順電圧 VF (1) IF = 1 mA 0.61 V
VF (2) IF = 10 mA 0.74
VF (3) IF = 100 mA 0.92 1.20
逆電流 IR (1) VR = 30 V 0.1 µA
IR (2) VR = 80 V 0.5
端子間容量 CT VR = 0, f = 1 MHz 2.2 4.0 pF
逆回復時間 trr IF = 10 mA 1.6 4.0 ns
  • 順電圧 (Forward voltage) V/ ピーク順電圧(Peak forward voltage) VFM
    規定の電流および温度条件下で、順方向電流によって生じる端子間の電圧降下の電圧値で順電圧 VF と呼びます。ただし、この項目は温度依存性が高いことから、パルス電流で規定している製品があります。この場合、ピーク順電流 VFM と呼びます。
    温度特性に関しては、通常Siダイオードでは温度係数は負、SiC SBDでは高電流領域で正となります。このためSiダイオードでは、熱暴走の恐れがあるため並列接続は推奨していません。
    以下のFAQに温度特性に関する説明があります。参考にしてください。
    FAQ:ダイオードの特性は熱によりどのように変化しますか?
I<sub>F</sub>– V<sub>F</sub> カーブ
IF– VF カーブ
I<sub>R</sub> – V<sub>R</sub> カーブ
IR – VR カーブ
  • 逆電流 (Reverse current) I/ 繰り返しピーク逆電流 (Repetitive peak reverse current) IRRM
    指定された逆電圧での逆方向漏れ電流です。漏れ電流は温度依存性が高いことからパルス電圧で規定している製品があります。なお逆回復動作時のMaximum Reverse Recovery Currentとは異なります。
C<sub>j</sub> – V<sub>R</sub> カーブ
Cj – VR カーブ
  • 接合容量(Junction capacitance)Cj / 端子間容量(Total Capacitance)CT
    接合部(ジャンクション)に生じる静電容量が主の容量です。接合部には空乏層があり、キャリアー(電子や正孔)がほとんど存在しません。この部分がコンデンサーの絶縁帯に相当します。空乏層の幅は印加する逆バイアス VRの大きさに相関することから、接合容量はVRに逆相関します。
    データシート上の定義は、規定の逆電圧条件下で、規定の周波数の小信号を印加したときの端子間の等価容量です。
オン → オフ遷移時のダイオードの動作
オン → オフ遷移時のダイオードの動作
  • 逆回復時間 (Reverse recovery time) trr
    順方向に通電しているダイオードに逆電圧を印加し非導通状態にするためには、ある時間が必要となります。pn接合ダイオードでは順電圧を印加しているときはn型半導体 (マイナス側) に電子、p型半導体(プラス側)に正孔が注入され、この多数キャリアーが接合付近で再結合し、またn型半導体からp型半導体に電子が(p型半導体からn型半導体に正孔が)少数キャリアーとして拡散することにより電流が流れています。逆電圧を印加すると、先ほどの多数キャリアーを打ち消す形でまず負電流 (逆回復電流 irr) が流れます。逆回復電流がピークを迎えると、空乏層ができ始めると同時に、ダイオードの電圧は反転します。各層に残った少数キャリアーの一部はある時間(ライフタイム)経過後に再結合して消滅しやがてゼロになります。
    逆回復時間 trrは、逆回復電流irrがなくなるまでの時間を表します。ただし、データシート上では次のように定義しています。順方向電流IF、逆電圧VR印加後の電流減少率di/dtが指定されています。この条件において、電流ゼロ交点から逆回復電流 irrのピーク値に達するまでの時間t1とします。
    ピーク値から逆回復電流の90%と50%の2点を結ぶ直線によるゼロ交点までの時間t2とします。t1とt2の和を逆回復時間 trrとしています。
オフ → オン遷移時のダイオードの動作
オフ → オン遷移時のダイオードの動作
  • フォワードリカバリー (forward recovery)tfr
    順方向に立ち上がりの急峻な電圧を印加してもダイオードはすぐに導通状態とはなりません。導電性を高めるために必要な電荷が蓄積されるまで少しですが時間が必要となります。この間ダイオードは順方向であっても抵抗の高い状態になり導通状態のVFと比べ高い電圧を持ちます。この現象をフォワードリカバリーと言います。このため、定常状態よりも大きな電力消費をすることになります。
    データシートの定義では指定された順方向電流IFにおいて、順方向電圧の10%の時間から、順方向電圧のピーク電圧を経由して、順方向電圧110%の値に達するまでの時間を順回復時間と定義しています。高耐圧品ほど長くなる傾向があります。

これ以外にも個々のダイオードで個別の特性を規定しています。詳しくは以下のアプリケーションノートをご覧ください。

関連リンク

製品ラインアップについては、以下のページ、ドキュメントをご参照ください。