ショットキーバリアダイオード(SBD)に逆回復時間(trr)はありますか?

ショットキーバリアダイオードはpn接合ダイオードとは異なり、多数キャリアーのみで動作するため原理的に逆回復時間はありません。ただし、寄生容量などによるわずかな逆回復時間があります。

pn接合ダイオードは順方向電圧印加時にp型半導体に少数キャリアーである電子が、n型半導体には正孔が流れ込むことでオンします。このように電子と正孔の両方が動作に寄与することからバイポーラーデバイスと言われます。これに対してショットキーバリアダイオード(SBD)、例えばn型半導体と金属のSBD、では、順方向電圧印加時に多数キャリアーが金属に流れ込みオンします。単一のキャリアーのみが動作に寄与することからユニポーラーデバイスと呼ばれます。
pn接合ダイオードに代表されるバイポーラータイプのダイオードでは、デバイスの耐圧を高くするために低濃度のN-層があります。この層はオン時には抵抗として見え、順方向電圧が高くなる欠点となります。しかし、実際の動作では、アノード側のP+層から多量の正孔(ホール)がN-層に流れ込みます。電気的に中性を保つために、これと同時にカソード側からも多量の電子が供給されます。このことによりN-層は一時的に多数のキャリアーが存在することになり、抵抗値が低くなります。このことを伝導度変調と呼びます。
これはデバイスのオン電圧(順方向電圧)を下げる点では良いことですが、オフ時にはすぐにオフできない(オフに時間がかかる)という欠点にもなります。伝導度変調によりN-層に侵入した多数の少数キャリアー(正孔)が行き場を失い、過剰な少数キャリアーが再結合により消滅するのに時間がかかるためです。この間を逆回復時間と呼び、逆電流が流れます。ショットキーバリアダイオードの場合、n型半導体(またはp型半導体)の少数キャリアーは動作に寄与しません。このため逆回復時間が存在しません。ただし、金属と半導体の異種の物質を接合することから、表面リークが大きくなります。このリークを減少させるために、pn接合を用いることがあります。また、これに加えて寄生容量を持つことから、pn接合ダイオードに比較すると微小ですが逆回復時間を持つことがあります。
伝導度変調については下記e-ラーニングに説明があります。参考にしてください。
e-ラーニング:ショットキーバリアダイオードの基礎 2-3. 伝導度変調

図-1 順方向バイアス印加時のダイオードの状態
図-1 順方向バイアス印加時のダイオードの状態
図-2 SiC SBD vs pn接合ダイオードTurn Off比較
図-2 SiC SBD vs pn接合ダイオードTurn Off比較

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