バイポーラートランジスターの電気的特性の測定方法について教えてください

データーシート記載の電気的特性(遮断電流、電流増幅率、飽和電圧)の測定回路例を示します。
各項目の説明はFAQ(バイポーラートランジスターの電気的特性について教えてください)を参照してください。
ここで説明する電気的特性はデーターシートでは表-1のように記載されています。

各項目の測定方法を以下に示します。半導体の特性は温度による影響を大きく受けます。室温だけでなく測定時の損失(電圧・電流)による変動も考える必要があります。測定時の室温の管理だけでなく、電圧・電流を流す時間も考慮ください。トランジスターの温度上昇を抑えるために、可能であればパルスでの測定を行ってください。

表-1 バイポーラ―トランジスター 電気的特性(2SC2712)
表-1 バイポーラ―トランジスター 電気的特性(2SC2712)

1. コレクター遮断電流 ICBO :(図-1)

絶対最大定格に記載されているコレクター・ベース間電圧 VCBO と対になる電気的特性です。エミッター開放の状態でベース・コレクター間のpn接合が逆バイアスになるように電圧を印加し、電流を測定します。コレクター・ベース間に印加する電圧VCBは絶対最大定格の電圧ですので、電圧値が規定値を超えないように注意をする必要があります。また ICBOはコレクター・ベース間のリーク電流ですので、温度により変動します。

2. エミッター遮断電流 IEBO :(図-2)

絶対最大定格に記載されているコレクター・ベース間電圧 VEBOと対になる電気的特性です。コレクター開放の状態でベース・エミッター間のpn接合が逆バイアスになるように電圧を印加し、電流を測定します。エミッター・ベース間に印加する電圧VEBは絶対最大定格の電圧ですので、電圧値が規定値を超えないように注意をする必要があります。 またIEBOはエミッター・ベース間のリーク電流ですので、温度により変動します。

図-1 コレクター遮断電流 測定回路
図-1 コレクター遮断電流 測定回路
図-2 エミッター遮断電流 測定回路
図-2 エミッター遮断電流 測定回路
図-3 直流電流増幅率 測定回路
図-3 直流電流増幅率 測定回路

3. 直流電流増幅率 hFE :(図-3)

コレクター・エミッター間に既定の電圧VCEを印加し目標のコレクター電流ICになるようにベース・エミッター間の電圧VBEを調節します。この時のベース電流IBを測定し、次式の計算の結果がhFEです。 hFE = IC / IB
尚、hFEは温度依存性があります。(図-4)
図-5に示すようにアーリー効果によりhFEは変化します。ベース幅の狭い高周波トランジスターではより大きな変化となります。

図-4 h<sub>FE</sub> – I<sub>C</sub> カーブ(温度の影響)2SC2712
図-4 hFE – IC カーブ(温度の影響)2SC2712
図-5 I<sub>C</sub> - V<sub>CE</sub> カーブ(アーリー効果)2SC2712
図-5 IC - VCE カーブ(アーリー効果)2SC2712

4. コレクター・エミッター間飽和電圧 VCE(sat) :(図-6)

図-6に示す回路で、まずベース・エミッター間に0.6 V程度の電圧を電圧源VBEで印加します。その後、コレクター電流ICを規定の電流になるまで徐々に増加させながら印加します。次にベース電圧VBEをベース電流IBが規定の値になるまで変化させます。IBが規定の電流になった時のコレクター・エミッター間の電圧VCEを測定します。この電圧がVCE(sat)です。
コレクター側の電流源はトランジスターがオフ状態で印加すると異常な高電圧になりトランジスターが破壊する可能性があります。絶対最大定格に記載しているコレクター・エミッター間電圧VCEO以下になるように電流源のオープン電圧を事前に設定してください。また、VCE(sat)は温度依存性があります(図-7)。

図-6 コレクター・エミッター間飽和電圧 測定回路
図-6 コレクター・エミッター間飽和電圧 測定回路
図-7 V<sub>CE(sat)</sub> – I<sub>C</sub>  カーブ(温度の影響)2SC2712
図-7 VCE(sat) – IC カーブ(温度の影響)2SC2712

5. ベース・エミッター間飽和電圧 VBE(sat) :(図-8)

図-8に示す回路で、まずベース・エミッター間に0.6 V程度の電圧を電圧源VBEで印加します。その後、コレクター電流ICを規定の電流になるまで徐々に増加させながら印加します。次に既定のベース電流IBになるようにVBEを調整し、この時のベース・エミッター間電圧を測定します。この電圧がVBE(sat)です。
コレクター側の電流源はトランジスターがオフ状態で印加すると異常な高電圧になりトランジスターが破壊する可能性があります。絶対最大定格に記載しているコレクター・エミッター間電圧VCEO以下になるように電流源のオープン電圧を設定してください。また、VBE(sat)は温度依存性があります。(図-9)。この規格はコレクター・エミッター間飽和電圧と対をなす規格です。(表-2)

図-8 ベース・エミッター間飽和電圧 測定回路
図-8 ベース・エミッター間飽和電圧 測定回路
図-9 V<sub>BE(sat)</sub> – I<sub>C</sub>  カーブ(温度の影響)2SC5354
図-9 VBE(sat) – IC カーブ(温度の影響)2SC5354
表-2 電気的特性 抜粋 2SC5354
表-2 電気的特性 抜粋 2SC5354

関連リンク

以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。