データーシート記載の電気的特性(しゃ断電流、電流増幅率、飽和電圧)の測定回路例を示します。
各項目の説明はFAQ(バイポーラートランジスターの電気的特性について教えてください)を参照してください。
ここで説明する電気的特性はデーターシートでは表-1のように記載されています。
各項目の測定方法を以下に示します。半導体の特性は温度による影響を大きく受けます。室温だけでなく測定時の損失(電圧・電流)による変動も考える必要があります。測定時の室温の管理だけでなく、電圧・電流を流す時間も考慮ください。トランジスターの温度上昇を抑えるために、可能であればパルスでの測定を行ってください。
1. コレクターしゃ断電流 ICBO :(図-1)
絶対最大定格に記載されているコレクター・ベース間電圧 VCBO と対になる電気的特性です。エミッター開放の状態でベース・コレクター間のpn接合が逆バイアスになるように電圧を印加し、電流を測定します。コレクター・ベース間に印加する電圧VCBは絶対最大定格の電圧ですので、電圧値が規定値を超えないように注意をする必要があります。また ICBOはコレクター・ベース間のリーク電流ですので、温度により変動します。
2. エミッターしゃ断電流 IEBO :(図-2)
絶対最大定格に記載されているコレクター・ベース間電圧 VEBOと対になる電気的特性です。コレクター開放の状態でベース・エミッター間のpn接合が逆バイアスになるように電圧を印加し、電流を測定します。エミッター・ベース間に印加する電圧VEBは絶対最大定格の電圧ですので、電圧値が規定値を超えないように注意をする必要があります。 またIEBOはエミッター・ベース間のリーク電流ですので、温度により変動します。
3. 直流電流増幅率 hFE :(図-3)
コレクター・エミッター間に既定の電圧VCEを印加し目標のコレクター電流ICになるようにベース・エミッター間の電圧VBEを調節します。この時のベース電流IBを測定し、次式の計算の結果がhFEです。 hFE = IC / IB
尚、hFEは温度依存性があります。(図-4)
図-5に示すようにアーリー効果によりhFEは変化します。ベース幅の狭い高周波トランジスターではより大きな変化となります。
4. コレクター・エミッター間飽和電圧 VCE(sat) :(図-6)
図-6に示す回路で、まずベース・エミッター間に0.6 V程度の電圧を電圧源VBEで印加します。その後、コレクター電流ICを規定の電流になるまで徐々に増加させながら印加します。次にベース電圧VBEをベース電流IBが規定の値になるまで変化させます。IBが規定の電流になった時のコレクター・エミッター間の電圧VCEを測定します。この電圧がVCE(sat)です。
コレクター側の電流源はトランジスターがオフ状態で印加すると異常な高電圧になりトランジスターが破壊する可能性があります。絶対最大定格に記載しているコレクター・エミッター間電圧VCEO以下になるように電流源のオープン電圧を事前に設定してください。また、VCE(sat)は温度依存性があります(図-7)。
5. ベース・エミッター間飽和電圧 VBE(sat) :(図-8)
図-8に示す回路で、まずベース・エミッター間に0.6 V程度の電圧を電圧源VBEで印加します。その後、コレクター電流ICを規定の電流になるまで徐々に増加させながら印加します。次に既定のベース電流IBになるようにVBEを調整し、この時のベース・エミッター間電圧を測定します。この電圧がVBE(sat)です。
コレクター側の電流源はトランジスターがオフ状態で印加すると異常な高電圧になりトランジスターが破壊する可能性があります。絶対最大定格に記載しているコレクター・エミッター間電圧VCEO以下になるように電流源のオープン電圧を設定してください。また、VBE(sat)は温度依存性があります。(図-9)。この規格はコレクター・エミッター間飽和電圧と対をなす規格です。(表-2)
以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。