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MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)は、金属酸化物半導体を利用した電界効果トランジスターで、パワーエレクトロニクスや高速スイッチング用途に不可欠な半導体デバイスです。
基本構造は4端子(ゲートG、ドレインD、ソースS、ボディB)で構成され、通常ボディはソースに接続されます。ゲート・ソース間電圧(VGS)によってドレイン-ソース間の導通状態を制御する電圧駆動型デバイスであり、ゲート電流がほとんど流れないため低損失を実現します。 MOSFETは、キャリアの種類によりN型(電子)とP型(正孔)に分類され、動作モードではノーマリーオフのエンハンスメント型とノーマリーオンのデプレッション型があります。バイポーラートランジスターが電子と正孔の両方を用いるのに対し、MOSFETは一種類のみを用いるユニポーラデバイスであり、高速スイッチング性能に優れています。 本記事では、ICやLSIに内蔵されるMOSFETではなく、主にディスクリートMOSFET(単体でパッケージングされた素子)の構造、動作原理、種類、特徴、用途について詳しく解説します。さらに、パッケージ情報や設計に役立つ参考資料も紹介します。
MOSFETは図-1に示すように、トランジスターの一種で電界効果トランジスター(FET)に含まれます。MOSFETは動作の仕方でエンハンスメント型とデプレッション型に分けられます。
電子機器などのシステムでは、故障時に制御信号(ゲート電圧)は “L” となる可能性があります。MOSFETが使用される主な用途であるスイッチングや電源スイッチ(ロードスイッチ)などでは、この故障時にMOSFETがオン状態(導通状態)になってしまうと安全上の問題が発生することがあります。このようなことからエンハンスメント型が主に使用されます。実際、販売されているMOSFETのほとんどがエンハンスメント型となっています。
更に、これらエンハンスメント型とデプレッション型はそれぞれP型とN型に分けられます。
物性的な側面から見ると、電子は正孔(ホール)よりも移動度が高くなります。移動度は電場(電界)下でキャリア(電子や正孔)がどれだけ早く移動できるかを表す指標です。つまり、移動度が高いとドリフト電流が増加します。MOSFETに与える影響としては、①オン抵抗(チャネル抵抗)が低下、②高速スイッチング、③ドレイン電流の増加 などがあります。したがって、プロセスが同等で製品に内蔵されるチップ面積が同じであれば、N型(N-ch)MOSFETの方が特性は良くなります。
図-1 MOSFETの分類
トランジスターを頂点に、FET、MOSFET、動作モード(エンハンスメント型・デプレッション型)、チャネル極性(P型・N型)へと階層的に分類されます。
これ以外に、製造プロセスによって横型・縦型などの分類があります。以下のFAQを参照ください。このドキュメントでは、トレンチゲート構造やスーパージャンクション構造についても説明しています。
エンハンスメント型N-ch MOSFETの簡易構造と記号を図-2に、デプレッション型 N-ch MOSFETの簡易構造図と記号を図-3に示します。デプレッション型ではゲート直下に薄いn層があります。
エンハンスメント型N-ch MOSFETはp型領域を挟む形で2か所のn型領域が存在し、このn型領域を跨ぐように絶縁膜で覆うことで他とは絶縁された電極が配置されています。それぞれの領域には電極がついており、n型領域の2つの端子はソース(S)とドレイン(D)、制御端子である絶縁膜上に配置された電極はゲート(G)と呼ばれます。裏面の端子はボディ(B) またはバックゲートと呼ばれ、ゲートに対向するp層の電位を決める端子です。通常のディスクリートMOSFET(ICではなくMOSFET単体の素子)ではパッケージ内部でソースに接続されています。
図-2 エンハンスメント型 N-ch MOSFET
エンハンスメント型NチャネルMOSFETの簡易構造と回路記号を示します。p型基板(ボディ)上に2つのn型領域(ソースとドレイン)があり、ゲートは絶縁膜上に配置されています。ゲートと対向するp型基板はボディと呼ばれ、通常ソースに接続されます。ゲート電圧によりチャネルが形成され、ドレイン-ソース間の電流を制御します。
図-3 デプレッション型 N-ch MOSFET
デプレッション型NチャネルMOSFETの簡易構造と回路記号を示します。p型基板上にソースとドレインのn型領域があり、ゲート直下には薄いn層が形成されています。ゲート電圧によりチャネルの導通度が変化し、ドレイン-ソース間の電流を制御します。
MOSFETには以下に示す3つの動作領域があります。これら領域はMOSFETの静特性として知られている 図-4 ID-VDSカーブ上に示されるそれぞれの範囲を指しています。
① 遮断領域(カットオフ領域) :ドレイン・ソース間電圧VDSを上げてもドレイン電流IDは流れません。
② 線形領域(リニア領域) :VDSに比例してIDが流れます。
③ 飽和領域(サチレーション領域) :IDはVDSには比例しません。ゲート・ソース間電圧に依存するほぼ一定のIDが流れます。
図-5に示す回路でドレイン・ソース間にVDSを印加し、ゲート・ソース間の電圧を徐々に上げていくとMOSFETはオンします。
このオンするときの電圧をゲートしきい値電圧(スレッシュホールド電圧)Vthと呼びます。
印加するVDSの電圧によって、リニア領域と飽和領域に分けられます。
VDS < VGS-Vth: リニア領域でオンします
VDS > VGS-Vth: 飽和領域でオンします
図-4 MOSFETの静特性(ID-VDSカーブ)
MOSFETの静特性を示すID-VDSカーブです。ドレイン電流(ID)とドレイン-ソース間電圧(VDS)の関係を表し、遮断領域、線形領域、飽和領域の3つの動作領域を重ねて示しています。
図-5 MOSFET 静特性測定回路
MOSFETの基本測定回路を示します。ソース・ゲート間に電圧を印加し、ソース・ドレイン間に別の電源を接続することで、ID-VDS特性を測定します。
動作に関する物性的な説明が、以下のFAQにあります。参考にしてください。
FAQ: MOSFETの動作について教えてください
補足: しきい値電圧(Vth)について
本FAQで記載するVthはMOSFETのゲートしきい値電圧を指します。ゲート・ソース間電圧がこの値を超えるとチャネルが形成され、MOSFETがオンします。なお、BJTで使われる「熱電圧(約26mV)」とは異なる概念です。
MOSFETは高速スイッチングとゲート電流がほとんど流れない特徴から、バイポーラ-トランジスターに代わって、主にパワーエレクトロニクス関連のスイッチング用途に使用されています。
MOSFETの特徴として挙げた高速スイッチングは、スイッチング電源などを小型化にするための高周波数化が可能となります。またバイポーラ-トランジスターやIGBTなどのバイポーラ-デバイスで問題となるテール電流がありません。また、オン状態を維持するためのゲート電流が必要ありません。このようなことから小型・低損失を求められるアプリケーションを中心に採用されています。
図-6に用途例を示します。
また、MOSFETを利用したパワーサプライ・パワーマネージメント・モーター制御などアプリケーションを下記リファレンスデザインセンターに多数掲載しております。こちらも参考にしてください。
リファレンスデザインセンター
スイッチング電源に関しては、ユーザー設計環境下でシミュレーションできるように電源の基本的な回路を準備しています。ダウンロードすることでシミュレーションに必要な時間を短縮し、パワーMOSFETを選定する際の事前検証時間を節約できます。こちらも参考にしてください。
スイッチング電源回路ライブラリー
図-6 MOSFETの回路例
MOSFETの代表的なアプリケーション例として、電源のオン/オフ制御に用いられるロードスイッチ、ディジタル信号のレベル変換やバス共有に用いられるオープンドレイン、絶縁型電力変換に用いられるフライバックコンバーターを示します。
東芝のMOSFETは汎用用途の小型のパッケージからパワー用途のパッケージまで多種多様なパッケージを展開しています。MOSFET単体が2個封入された2in1などの複合タイプの製品も提供しています。用途や放熱性、サイズ、実装方法などに応じて選択することが可能です。
図-7 MOSFETのパッケージ例
MOSFETのパッケージは大きく表面実装タイプとリード実装タイプに分かれ、表面実装タイプにはさらにリードレスパッケージの小分類が含まれます。
パッケージの詳細(寸法・参考PAD)については、以下のページを参照ください。
MOSFETのパッケージ
パッケージによる温度上昇比較シミュレーションなどの情報が以下のアプリケーションノートにあります。参考にしてください。
ディスクリート半導体 熱設計の勘どころ
製品ラインアップやその他のドキュメントについては、以下のページ・ドキュメントを参考にしてください。
※ このFAQ内で使用している社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。