第3世代SiC MOSFET 新パッケージTO-247-4L(X) を製品化 

SiC(シリコンカーバイド)を使用したパワーMOSFETは、現在、主流であるSi(シリコン)製のIGBTやMOSFETと比べ、低導通損失や高温環境下での動作に優れているだけでなく、高速スイッチングによる機器の低損失化に貢献します。

当社第3世代 SiC MOSFETの新パッケージであるTO-247-4L(X) は、4端子タイプで、パッケージ内部のソースワイヤのインダクタンスによる影響を低減することで、高速スイッチング性能をより引き出すことができます。これにより、サーバー、無停電電源装置(UPS)、太陽光インバーターなどのアプリケーションの低損失化に貢献します。

以下に、当社の新パッケージであるTO-247-4L(X)(以下、4端子タイプ)と当社既存製品であるTO-247(以下、3端子タイプ)を比較して、新パッケージ4端子タイプの特長およびスイッチング損失低減効果を詳しくご紹介いたします。

これは、第3世代SiC MOSFET 新パッケージTO-247-4L(X) を製品化の画像です。

TO-247-4L(X) パッケージの特長

3端子タイプの場合、図1に示す通り、ゲート駆動電圧VDRVを印加した際に、ソースワイヤのインダクタンス成分Lとドレイン電流IDの傾きdID / dtの成分により、逆起電圧VLSが発生します。
そのため、ゲート駆動電圧VDRVが逆起電圧VLS分だけ低減されます。よって、FETチップのゲート・ソース間に印加される電圧VGSは、ゲート駆動電圧VDRVが逆起電圧VLS分だけ低減された値となります。これにより、SiC MOSFETのスイッチング速度が遅くなります。 

これは、図1 3端子タイプの画像です。
図1 3端子タイプ

一方で、4端子タイプの場合、図2に示す通り、ゲート駆動用の信号ソース端子をFETチップに近い位置に接続することで、3端子タイプの場合に生じていた逆起電力VLSの影響を低減しています。
その結果、4端子タイプでは、ゲート・ソース間に印加される電圧VGSとゲート駆動電圧VDRVが同程度の値となり、3端子タイプと比べ、SiC MOSFETのスイッチング速度が向上しました。

これは、図2 4端子タイプの画像です。
図2 4端子タイプ

スイッチング損失低減効果

図3は、誘導負荷スイッチングによる、4端子タイプと3端子タイプのターンオンスイッチング波形になります。ターンオン時に、3端子タイプのドレイン電流ID(青い点線)よりも、4端子タイプのドレイン電流ID(赤い点線)の立ち上がりが急峻になります。これは図2に示す4端子タイプでは、3端子タイプに比べて、ソースワイヤのインダクタンスの影響が低減され、スイッチング時にゲートドライブ電圧VGSの低下を抑制します。よって、4端子タイプは、3端子タイプよりもターンオンの速度が速くなります。

また、図4では、4端子タイプと3端子タイプのターンオン損失Eonを示しています。4端子タイプのターンオン損失Eonは、3端子タイプのターンオン損失Eonよりも、約40 %低減しています。

これは、図3 ターンオンスイッチング波形の画像です。
図3 ターンオンスイッチング波形
これは、図4 ターンオン損失(E<sub>on</sub>)の画像です。
図4 ターンオン損失(Eon

 

測定条件
VDD = 800 V, VGS = 18 V / 0 V, ID = 20 A, Ta = 25 ℃, L=100 μH, 外部ゲート抵抗Rg = 4.7 Ω,
還流ダイオードは各製品のソースドレイン間のダイオードを使用
(2023年7月、当社比)

図5は、誘導負荷スイッチングによる、4端子タイプと3端子タイプのターンオフスイッチング波形になります。ターンオフ時に、3端子タイプのドレイン電流ID(青い点線)よりも、4端子タイプのドレイン電流ID(赤い点線)の減少が速くなります。つまり、4端子タイプは、3端子タイプよりもターンオフの速度が速くなります。

また、図6では、4端子タイプと3端子タイプのターンオフ損失Eoffを示しています。4端子タイプのターンオフ損失Eoffは、3端子タイプのターンオフ損失Eoffよりも、約34 %低減しています。

これは、図5 ターンオフスイッチング波形の画像です。
図5 ターンオフスイッチング波形
これは、図6 ターンオフ損失(E<sub>off</sub>)の画像です。
図6 ターンオフ損失(Eoff

 

測定条件
VDD = 800 V, VGS = 18 V / 0 V, ID = 20 A, Ta = 25 ℃, L=100 μH, 外部ゲート抵抗Rg = 4.7 Ω,
還流ダイオードは各製品のソースドレイン間のダイオードを使用
(2023年7月、当社比)

4端子タイプと3端子タイプの外部ゲート抵抗Rgに対するターンオン損失Eonおよびターンオフ損失Eoffの関係を図7に示します。

  • 4端子タイプと3端子タイプのいずれにおいても、外部ゲート抵抗Rgが大きくなると、ターンオン損失Eonおよびターンオフ損失Eoffも大きくなる傾向があります。
  • 4端子タイプは、3端子タイプに比較して、ターンオン損失Eonおよびターンオフ損失Eoffのいずれも小さくなります。
これは、図7 ターンオン損失(E<sub>on</sub>)、ターンオン損失(E<sub>off</sub>)のR<sub>g</sub>依存の画像です。
図7 ターンオン損失(Eon)、ターンオン損失(Eoff)のRg依存

 

測定条件
VDD = 800 V, VGS = 18 V / 0 V, ID = 20 A, Ta = 25 ℃, L=100 μH, 外部ゲート抵抗Rg = 4.7 Ω,
還流ダイオードは各製品のソースドレイン間のダイオードを使用
(2023年7月、当社比)

関連情報

リファレンスデザインは下記ページをご覧ください。
リファレンスデザイン

各種アプリケーションへの応用例は下記ページをご覧ください。
サーバー
無停電電源装置
LED照明

パッケージの詳細は下記ページをご覧ください。
パッケージ

関連のニュースリリースは下記ページをご覧ください。
産業用機器の電力効率に貢献する第3世代SiC MOSFETのTO-247-4L(X)パッケージ製品の発売について
SiC MOSFETの信頼性を向上させるデバイス構造を開発
低オン抵抗でスイッチング損失を大幅に低減したSiC MOSFETを開発

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MOSFET

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