トランジスターは、少なくとも3つの端子を持ち、電気信号を増幅する機能やスイッチングする機能を持つ半導体デバイスです。その構造によって大きくバイポーラ-トランジスター (BJT) と電界効果トランジスター (FET) に分けられます。また、これ以外に入力段がMOSFET、出力段がBJTの特性を持つ絶縁ゲートバイポーラ-トランジスター (IGBT) があります。
トランジスターの分類を 図-1 に示します。以下のFAQにも説明があります。
各種トランジスターの簡易構造図と記号を図-2に示します。
BJTの動作を少しだけ物性的に考えてみます。トランジスターはベース電流を増幅してコレクター電流を流す電流制御型素子ですが、ここではベース電流ではなくベースにかかる電圧で説明します。NPNトランジスターのエネルギーバンド図を図-5に示します。
NPNトランジスターのエミッター・ベース・コレクターの不純物濃度をそれぞれNE・NB・NCとすると、NE >> NB > NC となります。この不純物濃度に比例して、自由電子または正孔が存在します。また、各自由電子の持つエネルギーは、フェルミ分布 (フェルミディラック分布) に従います。
無バイアス状態では各pn接合には空乏層生成による内蔵電位 (エミッターの伝導帯 (Conduction band) の最下限とベースの伝導帯の最下限までのエネルギー差) が発生し、エネルギー障壁が生じています。エミッターの電子はこの障壁を超えることができず、コレクター・エミッター間に電流は流れません。
図-3に示す回路でベース・エミッター間に順バイアス (オン電圧より高いVBE) を印加するとエネルギー障壁が下がり、エミッターにある自由電子の一部は障壁を超えてベースに拡散します。同時にベースにはベース電流として正孔が注入されます。ただし、NE >> NB なので、エミッターから拡散される自由電子の数はベースの正孔の数よりはるかに多い状態です。拡散してきた自由電子の一部はホールと再結合しますが、自由電子の数に対してホールの数が少ないこと (ベース・コレクターの不純物濃度差)、ベースの厚 (幅) が薄いため、そのほとんどがベース・コレクター間の電界によってドリフトしコレクターに流入することになります。これがコレクター電流となります。
図7に示すようにN-ch MOSFETはP型半導体にソースとドレインとなるN型半導体が埋め込まれた形になっています。
N型半導体は電子が過多、P型半導体は正孔が過多となっています。ゲート・ソース間に電圧 (VGS) を印加するとゲート電極とその直下のP型半導体はコンデンサーと同様の働きをします。ここでゲート・ソース間に電圧を印加すると電極板側はプラスに帯電し、P型半導体側はマイナスに帯電します (電子が集まり電子過多の状態)。つまり、ゲート直下のP型半導体表面 にはマイナスの電荷が集められ自由電子が多い状態となります。この状態はP型半導体でありながらN型半導体と同じ性質を持つことから、反転層と呼ばれます。
無バイアス状態からゲートに電圧VGSを印加します。まず、反転層形成前にゲート電極と対抗するP型半導体の正孔が消滅し、空乏層が生じます。しきい値電圧VTと呼ばれる電圧に達すると、反転層が形成されます。ソースとドレインはこの反転層で接続されることになります。この反転層をチャネルと呼び、この例の場合、N型のチャネルなのでN-ch MOSFETとなります。
このようにMOSFETはOFFからONへの遷移時に、このコンデンサーの充電電流が必要ですが、オンしてしまえば、BJTのベース電流のような電流は必要ないので、省電力化が可能となります。 (ただし、電力用途のMOSFETなどでは寄生のコンデンサー容量が大きく、この容量を急速に充電しオンさせるためにドライブ回路が必要です)
トランジスターはあらゆる電子機器に使用され、主に電気信号をスイッチ (オン/オフ) する回路や増幅させる回路に使用されます。スイッチとしてはロジック信号レベル (~5V) 程度でオン/オフさせる回路やスイッチング電源などがあります。増幅回路も単なる信号の増幅だけでなく発振回路などにも使用されます。このようにトランジスターは広範囲に使用されてています
これらの回路にはBJTとMOSFETのどちらも使用される可能性があります。その回路でどの特性 (スピード、損失、ゲインなど) を重要視するか、どの電圧・電流・周波数で使用するかによって、その選択は変わってきます。
参考のために、それぞれのデバイスに関係するキーワードを列挙しておきます。
いくつかの回路例を下記に示します。
図-10 トランジスターを用いた回路例
スイッチング電源に興味のある方は、以下の動画も参考にしてください
[教育] スイッチング電源の基礎 (5) ~フルブリッジコンバーター~
[教育] スイッチング電源の基礎 (6) ~DCDCコンバーターについて~
[教育] スイッチング電源の基礎 (7) ~共振ハーフブリッジコンバーター~
[教育] スイッチング電源の基礎 (8) ~ブリッジレスPFC~
東芝のBJT・MOSFETは小型のパッケージからパワー用途のパッケージまで多種多様なパッケージを展開しています。小型の製品では2in1などの複合タイプも提供しています。
パッケージの詳細 (寸法・参考PAD) については、以下のページを参照ください
製品ラインアップについては、以下のページ、ドキュメントをご参照ください。
* このFAQ内で使用している社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。