1-12. ラッチアップ対策

ラッチアップはCMOS特有の現象で、SCR (Silicon Controlled Rectifier) 生成に起因します。
N基板のCMOSの場合を考えてみましょう。下図にある通り、CMOSには様々な寄生バイポーラTr (Q1~Q6) が存在し、内部でトライアック回路を形成しています。入出力端子に過大なノイズ、サージなどの電圧、電流が印加されたり、電源振幅が急激に変動されたりすると、内部のトライアック回路がオンし、VCC-GND間に異常電流が流れ、原因となった信号を切断してもその異常電流が持続し、ついには破壊に至らしめる現象をいいます。

CMOSロジックICの寄生素子を含む等価回路
CMOSロジックICの寄生素子を含む等価回路

ラッチアップに至るプロセスを簡単に説明します。
下図に寄生素子を含む等価回路を示します。
N-ch MOSFET側のP‐Wellには、NPNトランジスターQ2、P-ch MOSFET側のN‐SubstrateにはPNPトランジスターQ1がおのおの形成され、その他、端子間には寄生抵抗Rs、Rwが存在します。寄生素子Q1、Q2はサイリスターを構成しています。

例えば、外部からの要因でN‐Substrateに電流が流れ込んだとすると、N‐Substrateの抵抗Rsの電圧降下が起き、これがQ1をONさせP-Wellの抵抗Rwを介してVCCからGNDに向かって電流が流れます。Rwに電流が流れるとRw両端に電位差が発生しQ2がONしてさらにRsを介して電源電流が流れます。これによりさらにRs両端に電位差が発生し、Q1、Q2がONしたままとなり電源電流はますます増大します。
このように、P‐Wellの抵抗Rw、およびN‐Substrateの抵抗Rsに電位差が発生すると、ラッチアップが起きます。

ラッチアップ誘発防止方法の例
ラッチアップ誘発防止方法の例

対策 ⇒ 絶対最大定格内にとどめる

過大なサージなどが印加される可能性があるインタフェース部分には、保護回路を付加することを推奨します。(下図参照)

CMOSロジックIC 使用上の注意

1-1. 未使用入力端子の処理について
1-2. 入力信号の立ち上がり時間、立ち下がり時間の規定について
1-3. 出力端子の短絡・出力衝突について
1-4. CMOS出力端子への負荷容量接続について
1-5. 消費電流、消費電力の計算方法
1-6. 入力トレラント機能を活用した電圧レベル変換
1-7. パワーダウンプロテクション機能の応用事例(パーシャルパワーダウン)
1-8. 各シリーズの入力トレラント機能/出力パワーダウンプロテクション機能一覧
1-9. 注意すべきノイズ
1-9-1. スイッチングノイズの対策
1-9-2. 反射ノイズの対策
1-9-3. クロストークの対策
1-10. ハザードの対策
1-11. メタステーブル対策
1-13. ESD対策

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