3-19. RC-IGBT/IEGTとは

RC-IGBT(Reverse Conductive :逆導通 IGBT)

  • RC-IGBTの構造を図3-16(a)に示します。
    IGBTチップのコレクターであるp層にn層による開口部を設けダイオードを構成します。このダイオードは、一般のIGBTに挿入されるFWD(*1)と同様な働きをします。
  • 薄ウェハー技術の導入に伴い製品化が可能となりました。ダイオードとIGBTが、1チップのため組立が簡単で安価な製品が可能となりますが、両者の性能を分離して制御することが困難なため、適合しない応用があります。

*1:FWD—Free Wheeling Diodeの略で一般的にリアクタンスの逆起電力の転流用に用いられます。

RC-IGBTの構造
図3-16(a) RC-IGBTの構造

IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor:
注入促進型IGBT)

  • 高耐圧のIGBTは、エミッター側のドリフト層(n-層)のキャリア濃度が低下し低VCE(sat)特性を得ることが難しくなります。
  • IEGTは、高耐圧(一般的には1200V以上)で
    低VCE(sat)性能を得るために開発されました。
  • 図3-16(b)に構造およびその原理を示します。
  • トレンチゲート構造でかつゲート電極の引き出しを間引いています。その結果、間引かれたゲート電極直下にキャリアが蓄積されエミッター側のキャリア濃度を高めます。
  • 高キャリア濃度によりドリフト層(n-)の抵抗値が低下、低VCE(sat)化を図れます。
IEGTの構造とキャリア濃度
図3-16(b) IEGTの構造とキャリア濃度

第3章 トランジスター

3-1. トランジスターの種類
3-2. バイポーラートランジスター
3-3. 抵抗内蔵型トランジスター
3-4. JFET
3-5. MOSFET
3-6. BJTとMOSFETの動作
3-7. MOSFETの構造と動作
3-8. MOSFET:RDS(ON)の決定要因
3-9. MOSFET:低RDS(ON)
3-10. Super Junction MOSFET
3-11. MOSFETの構造別特長
3-12. MOSFET:ドレイン電流と許容損失
3-13. MOSFET:アバランシェ耐量
3-14. MOSFET:容量特性
3-15. MOSFET:安全動作領域(SOA)
3-16. IGBT
3-17. IGBTの動作
3-18. IGBT:縦方向デザインの進化
3-20. IGBTの応用機器
3-21. IGBTとMOSFETの比較
3-22. 各トランジスターの比較まとめ
3-23. MOSFET:最大定格
3-24. MOSFET:電気的特性
3-25. MOSFET:容量・スイッチング特性
3-26. MOSFET:ボディーダイオード

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